都市部においても森や海が人々の身近にあるデンマーク。多くの美術館が自然を取り入れた環境をテーマにしている。元富裕層の邸宅、王室の離宮、著名女性作家の生家など、異なる年代の建物や庭でアートを身近に感じたい。


画家たちが愛用した
家具やパレットも展示

●ヒアシュプロング・コレクション

【物議を醸したハンマースホイのデビュー作】
ヒアシュプロングで観るべきは、《若い女性の肖像、画家の妹アンナ・ハンマースホイ》だ。21歳のハンマースホイは、この作品でデンマーク美術大賞に応募したが、明るい色彩を好んだ当時の美術界には拒否された。だが、その決定に反対運動が起こり、一躍話題になったという。そんな逸話に関わらず、アンナの眼差しに魅入られるファンも多い。/ヴィルヘルム・ハンマースホイ 《若い女性の肖像、画家の妹アンナ・ハンマースホイ》1885年制作。

 市内中心部から車で東へ10分ほどの閑静な住宅地。国立美術館の広大な庭園内に隠れ家風美術館はある。

P.S.クロイヤーの《夏の夕暮れ、スケーエンのビーチを歩く画家と妻》(1899年)は特に有名。

 ここには、19世紀のデンマークを代表する画家達、例えばゴールデン・エイジを代表するC.W.エッカースベルグ、ユトランド半島の北端、スケーエンを拠点に風景や生活を描いた「スケーエン派」のP.S.クロイヤーやアンナ&ミカエル・アンカー夫妻、そして、モノトーンの静謐な世界を描くヴィルヘルム・ハンマースホイなどの作品に加え、彼らが愛用した家具やパレットも展示されている。

C.W.エッカースベルグの《鏡の前の女》(1841年)など、ゴールデン・エイジの作品を集めた展示室。

 もともとは、タバコ会社を経営していたへインリッヒ&パオリーヌ・ヒアシュプロング夫妻が、1902年に彼らの膨大なアートコレクションを国に寄贈したことから始まった。

ハンマースホイのパレット。

 展示スペース用にこの建物が建てられたのだが、当時の最新式の照明器具を使うなど、来館者が作品を観やすいように考慮されたという。

 そういったディテールが評価されたのか、建物は'95年に国の文化財に指定されている。

玄関ホールの床はタバコの花をモチーフにしたモザイクタイルになっている。天井には煙をイメージした装飾。タバコ会社経営者ならではのあしらいも。

ヒアシュプロング・コレクション

所在地 Stockholmsgade 20, København Ø
電話番号 3542 0336
開館時間 11:00~16:00
休館日 月・火曜、祝日
入館料 95デンマーク・クローネ
https://hirschsprung.dk/

Feature

美しい美術館の宝庫
デンマークでアート体験

Text=Chieko Tomita
Photo=Atsushi Hashimoto

この記事の掲載号

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※この記事のデータは雑誌発売時のものであり、現在は異なる場合があります。