都市部においても森や海が人々の身近にあるデンマーク。多くの美術館が自然を取り入れた環境をテーマにしている。元富裕層の邸宅、王室の離宮、著名女性作家の生家など、異なる年代の建物や庭でアートを身近に感じたい。


美術館で過ごす歓びに
心ゆくまで浸りたい

●ルイジアナ近代美術館

 コペンハーゲン中央駅から、北に向かう郊外電車で約30分。住宅地や森の小径を通り抜けた先に、ルイジアナ近代美術館がある。

 世界中の美術関係者が“世界一美しい美術館”と賞賛するわりには、入り口は驚くほど小さい。

 だが館内を歩くと、広大な庭の自然と古い邸宅だった建物が絶妙なバランスで美術品を引き立てていることに気づく。

 1958年、実業家クヌド・W・イェンセンが「多くの市民が近代アートに親しめる場所を作りたい」と私財を投じたルイジアナに、現在は年間50万人以上が訪れる。

 誰もが知る《モナリザ》のような作品があるわけではないが、人々は回廊で繋がれた建物を気ままに移動し、絵画、彫刻、映像などの近代アートに触れ、カフェでひと休みし、テラスで海辺の風景を眺める。

Text=Chieko Tomita
Photo=Atsushi Hashimoto