都市部においても森や海が人々の身近にあるデンマーク。多くの美術館が自然を取り入れた環境をテーマにしている。元富裕層の邸宅、王室の離宮、著名女性作家の生家など、異なる年代の建物や庭でアートを身近に感じたい。


美術館で過ごす歓びに
心ゆくまで浸りたい

●ルイジアナ近代美術館

世界一美しいと評される「ルイジアナ近代美術館」。カルダー・テラスから、晴れた日にはスウェーデンが対岸に望める。

 コペンハーゲン中央駅から、北に向かう郊外電車で約30分。住宅地や森の小径を通り抜けた先に、ルイジアナ近代美術館がある。

古い邸宅の佇まいが残る入り口。初めて訪れた人は小ささに驚く。

 世界中の美術関係者が“世界一美しい美術館”と賞賛するわりには、入り口は驚くほど小さい。

【窓からの四季の変化を借景にアート鑑賞】
ルイジアナを代表する展示室「ジャコメッティ・ルーム」。設立者クヌド・W・イェンセン氏が特に気に入っていたという“池の眺め”と《歩く男》が融け合い、一つの作品のよう。「《歩く男》は常に変化を続け、時代を反映した展示をするルイジアナの象徴ともいえる作品」と館長。ここは、「その空間にいる幸せ」に満ちている。

 だが館内を歩くと、広大な庭の自然と古い邸宅だった建物が絶妙なバランスで美術品を引き立てていることに気づく。

【実験的アーティスト、アスカー・ヨーン】
1940年代には国際的前衛アーティスト集団「コブラ」を仲間と設立するなど、デンマークを代表する実験的アーティスト、アスカー・ヨーン。粗い筆致と溢れ出す色彩で描いた作品はエネルギッシュで、至近距離で見入っている人も多い。ルイジアナではヨーン美術館に次ぐ規模の作品を所有し、「ヨーン・ギャラリー」で展示している。

 1958年、実業家クヌド・W・イェンセンが「多くの市民が近代アートに親しめる場所を作りたい」と私財を投じたルイジアナに、現在は年間50万人以上が訪れる。

庭園は憩いの場。刻一刻と表情を変えるオーレスン海峡は見飽きることがない。

 誰もが知る《モナリザ》のような作品があるわけではないが、人々は回廊で繋がれた建物を気ままに移動し、絵画、彫刻、映像などの近代アートに触れ、カフェでひと休みし、テラスで海辺の風景を眺める。

Text=Chieko Tomita
Photo=Atsushi Hashimoto

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