都市部においても森や海が人々の身近にあるデンマーク。多くの美術館が自然を取り入れた環境をテーマにしている。元富裕層の邸宅、王室の離宮、著名女性作家の生家など、異なる年代の建物や庭でアートを身近に感じたい。


遺跡から印象派まで集めた
都会のオアシス

●ニイ・カールスベルグ・グリプトテク美術館

「ウィンター・ガーデン」横の展示室。1800年代のデンマークとフランスの彫刻が並ぶ。

 コペンハーゲンの中心部、世界最古のテーマパークであるチボリ公園の並びに、宮殿のように立派な赤煉瓦造りの建物がある。

荘厳な玄関は、建築家ダールルップがパリの凱旋門をイメージして設計したといわれている。

 デンマークのビールブランド、カールスバーグ・ビールの設立者の息子、カール・ヤコブセンが自身のコレクションを展示するために建てたグリプトテク美術館だ。

左:デンマーク・ゴールデン・エイジに活躍した彫刻家、ベルテル・トーヴァルセンの肖像画。クリストファー・ヴィルヘルム・エッカースベルグ作。
右:1階の彫刻展示室の天井画にも注目。

 館内に足を踏み入れると、ルネサンス形式の荘厳な建物や王宮以外では珍しい装飾的な天井画に目を奪われ、その重厚な内観に19世紀にタイムスリップしたような感覚に陥る。

 と同時に、鮮やかなブルーやグリーンの壁色に、「デンマークといえば白い壁にシンプルな北欧デザインの家具」というイメージが覆される。

展示室に向かう階段。冬が暗いデンマークの建物らしく、天窓から自然光を取り入れる工夫がされている。

 展示されているのは、デンマークとフランスの19世紀の彫刻、絵画に加え、ギリシャ、ローマ時代の彫刻、古代地中海の遺跡、エジプトのミイラまで、実に多彩だ。ヤコブセンの興味の幅広さが垣間見られる内容は、博物館と美術館の中間といえよう。

19世紀前半、「ゴールデン・エイジ」と呼ばれる時代の作品が並ぶの展示室。

 美術館は三つの建物から成っている。1897年にオープンし、1906年に中庭の「ウィンター・ガーデン」を含む部分を増築。

 さらに、'96年にも拡張され、現在では約1万作品をゆったりとした空間で観られるようになった。

Text=Chieko Tomita
Photo=Atsushi Hashimoto

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