都市部においても森や海が人々の身近にあるデンマーク。多くの美術館が自然を取り入れた環境をテーマにしている。元富裕層の邸宅、王室の離宮、著名女性作家の生家など、異なる年代の建物や庭でアートを身近に感じたい。


サロン文化を牽引した
マダムの邸宅

●ソフィーンホルム美術館

池側から見た美術館。手前の白いベンチはイングヴァー・クロンハマーによる《サロン》(2003年)。

 コペンハーゲン中央駅から電車とバスを乗り継いで約40分。大きな家が立ち並ぶ住宅街の緩やかな坂道を上ると、ソフィーンホルムの門がある。

 中に入れば、海のように広大な池に面した庭があり、犬の散歩をする人、小さな子どもを連れたカップルなどが思い思いに過ごし、美術館というより市民公園のような趣だ。

冬が長いデンマークでは、晴天なら真冬以外は外でお茶をする習慣がある。ここでも、水辺でのティータイムがおすすめだ。

 1768年、当時のデンマーク郵政局長官の私邸として建てられたソフィーンホルムは、'90年に実業家のコンスタンチンブルンと妻のフレデリッケが別荘として買い取ると、その最盛期を迎えた。

画家のニナ・スティン=クヌッセンの個展より。壁に制作されたインスタレーション《城》。

 詩人として成功し、ゲーテやシラーなどのヨーロッパ文化人との交流があったフレデリッケが文化サロンを主宰。有名無名を問わず、詩人、劇作家、外交官、そして王族のメンバーまでが連日のように集い、デンマーク文学の振興の場となったのだ。

Text=Chieko Tomita
Photo=Atsushi Hashimoto

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