「崖」のルーツは
松本清張にあらず?

速水 ちなみにミステリと観光ブームというつながりは、日本では松本清張の『ゼロの焦点』から始まってますね。女性が一人で北陸のローカル鉄道の旅をする話で、1961年に映画化されたのがきっかけで北陸に観光ブームが訪れる。『ゼロの焦点』は最後に崖の場面があるんですけど、これが2時間ドラマにつながる。

大野 ……という説があるじゃないですか。だけど実際に関係者に聞くとみんな違うって言うんですよ。少なくとも私がヒアリングした土ワイの初代の制作者たちは、「誰も『ゼロの焦点』なんか全然意識してなかったよ」って。

速水 そうなんですか!? それは衝撃です。

大野 初代の土ワイのチーフプロデューサーだった井塚英夫さんという人が、テレビはいろいろ殺人事件があっても、最後に「ああ、よかったよかった」で終わらなきゃいけないんだって、スタッフ全員集めて訓示したんですって。じゃあ最後大団円でみんな集まる終わり方にしようかって。

速水 舞台のカーテンコール代わりなんですね。

大野 最後は名所旧跡でバーンと終わるという意味もありますよね。でも実際に作品を見てみると、2時間ドラマに崖が定番として登場するのって90年代以降なんです。

速水 そうなのか!

大野 90年代になって2時間ドラマがパロディー的に語られ始めて、最後は崖というのがお約束として語られ始めたんだと思います。

速水 さらに90年代以降の2時間ドラマが、それをセルフパロディー的に取り入れていく。今となっては崖が出てこない2時間ドラマは、むしろ希少ですもんね。

大野 「混浴露天風呂連続殺人」シリーズに崖はあまり出てこなかったと思います。

速水 へー、思い込みは怖い。

» talk02に続く (9/XX公開予定)

『2時間ドラマ 40年の軌跡』

著・大野 茂
発行 東京ニュース通信社
発売 徳間書店
1,500円+税

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大野 茂(おおの しげる)

阪南大学教授(メディア・広告・キャラクター)。1965年東京生まれ。慶応義塾大卒。電通のラジオ・テレビ部門、スペースシャワーTV/スカパー! 出向、NHKディレクターを経て現職。著書に『サンデーとマガジン』(光文社新書)がある。

速水健朗(はやみず・けんろう)

ライター・評論家。1973年金沢市生まれ。TOKYO FM「速水健朗のクロノス・フライデー」などに出演中。近著に『東京どこに住む? 住所格差と人生格差』(朝日新書)、『東京β:更新され続ける都市の物語』(筑摩書房)など。

2018.10.11(木)
構成=速水健朗
撮影=深野未季
写真=文藝春秋