京都の寺院に待っているのは早朝の坐禅や貸切の襖絵鑑賞など、新たな扉の向こうに一歩を踏み出すような体験。
賑わうなかでの参拝とはまた違う寺院での時間は、深く呼吸したくなる心地よさに満ちている。安らかな時間が過ごせるおすすめの5寺をご紹介。
ひとつのことに集中することが禅の修行
◆退蔵院(たいぞういん)
禅に行住坐臥という言葉がある。座っても立ってもいかなる時も、ひとつのことに集中すれば禅の修行となる、との意味だ。
そこから発想を膨らませたのが、妙心寺塔頭、「退蔵院」の副住職、松山大耕さん。「ひと粒の飴も舐めることだけに集中すれば、禅の入り口に立てるのでは」とオリジナルの飴玉を作り上げた。
瞑想効果のあるハーブ、ゴツコラのエキスと、境内で採れた柚子のオイルを加えた爽やかな飴。味の広がりがたどる、身体の中の旅路に意識を集中して舐めるのだという。
最後に杉の粉が出てきたら終わりの合図。本堂で庭を眺めながら坐禅を行うのはもちろん、思い思いの時間や場所で体験することもできる。
修行とはこんなに自由なものだったのかと気づかされる、ひと粒だ。
退蔵院(たいぞういん)
所在地 京都市右京区花園妙心寺町35
電話番号 075-463-2855
拝観時間 9:00〜17:00
定休日 無休
拝観料 600円
http://www.taizoin.com/
Feature
心と美に向かう
寺院での静謐なひととき
Text=Mako Yamato
Photographs=Atsushi Hashimoto