ふんわり、サクサク。軽い歯触りとかろやかな食感。噛むうちに香ばしいお米の味が口いっぱいに広がっていく。友人からもらったおせんべいがあまりにおいしかったので、そのお店を訪ねてみました。

玄米のおせんべいを作り続けて60年の職人技が光る、有機玄米100%の「玄米このは」。

 兵庫県加西市。播磨平野のほぼ中央に位置する市で、姫路市のベッドタウンでもあり、兵庫県立フラワーセンターや約500体の石仏群「五百羅漢」で知られています。姫路駅から神姫バスに乗り、山間や田畑を抜けて約1時間。車なら、中国自動車道の加西インターか、滝野・社インターから約15分の距離。近代的な工業団地に、おせんべいを作る『合名会社アリモト』の黒壁の工房と、お店『いっぷくせんべい半月庵』がありました。

左:この旗が目印の、『いっぷくせんべい半月庵』。
右:店内にはおせんべいからかりんとうまで、こだわりのおやつがずらり。
試食コーナー。自分の舌で試して購入できるのが嬉しいサービス。

「工場に隣接したお店なんですよ」と迎えてくださったのは、アリモトの専務取締役の有元悦子さん。ガラリ戸を開けて入った店内には、おせんべいがぎっしり! 一角には20種類余りを試食できるコーナーがあり、色々食べて選んで買って帰ることができます。

「昭和27年(1952年)、義父が姫路特産の揚げかりんとうで創業しました。食養生の基本は玄米だと知った義父が、何年もかかって食べやすい玄米せんべいを開発し、それを世に広めたいと頑張ってきました」。

 玄米は、白米と同じ製法でおせんべいを作っても、糠(ぬか)がひっかかる感じがして、おいしく食べられません。初代は、何度も試作を繰り返し、ゴマを加えて糠臭さを押さえ、香ばしくする独自の作り方をあみだしたのだそう。

 使っているのは有機JAS認定の国産の有機玄米。いったん玄米餅を作ってから生地を冷まし、ゴマを加えて成形。半日以上かけてゆっくりと水分を抜いてから焼き上げます。この、最終段階での乾燥、水分の抜き具合がとても難しいのだとか。

「加西工場に併設しているこの店では、この焼く前の生地があるので、店内で手焼きを体験していただけるんですよ」。

2014.12.28(日)
文・撮影=そおだよおこ