この記事の連載

 配信プラットフォームが活況を呈し、テレビの観られ方が大幅に変わりつつある今、番組のつくり方にもこれまでとは違う潮流が勃興しています。その変化の中で女性ディレクター/プロデューサーは、どのような矜持を持って自分が面白いと思うものを生み出しているのか。その仕事論やテレビ愛を聞く連載です。

 今回は、『30歳まで童貞だと魔法使いになれるらしい』や『今夜すきやきだよ』など、人気ドラマを多く手掛けるテレビ東京の本間かなみさんにに話を伺いました。


派遣社員のまま人気ドラマプロデューサーに

――本間さんはもともとテレビ業界志望だったんですか?

 小さい頃からテレビが好きで、高校3年生で進路を決めるときに「テレビの仕事をやってみたいかもな」とぼんやり思ってはいました。ただ、中学も高校も出席率がとっても悪くて、お勉強も頑張っていなかったので自分には無理だろうな、と。それで結局、全然関係のない仕事に就きました。でも働き出してから、学生のアルバイトと違って社会人にとっては仕事が人生のメインチャンネルになるんだと感じて、「だったら自分の好きなことに時間を費やしたい」と思ったんですね。それでやっぱりテレビに挑戦してみたくて転職しました。

――子ども時代はテレビのどんなところに惹かれたんでしょうか。

 ドラマが好きで毎日観てました。群馬県出身なんですが、とにかく山に囲まれた田舎だったので(笑)、刺激を得られるのがテレビドラマだったんだと思います。新しい言葉や新しい価値観を教えてくれて、そこにすごくワクワクしていた気がします。もちろんバラエティも好きだったから、家にいる間は朝起きてから夜寝る前までずっとテレビがつけっぱなしでしたね。

――最初は派遣社員として他局でバラエティのADやAPをされていたそうですね。

 そうですね。転職するとき、テレビ業界のことを何もわかっていなかったので「どの会社に行けばテレビがつくれるんだろう?」というところからのスタートで。それで転職サイトの上のほうに出てきた会社に面接に行ったらそこが派遣会社だったんです。21歳から26歳くらいまでずっとバラエティをやっていました。
 バラエティも楽しかったんですが「ドラマをやりたい」という気持ちが捨てきれなくて、当時の派遣会社の上の人に何度も相談していたら「テレビ東京のドラマ室が派遣スタッフを募集しているから、そっちに行ってみる?」と言ってくれたんですね。それでドラマ室に入って、APをやらせてもらっていました。

――そして初めて手掛けられた『30歳まで童貞だと魔法使いになれるらしい』(2020年/以下『チェリまほ』)が大ヒットします。派遣社員の方による企画・プロデュース作品であることも話題になりました。

 当時のドラマ室の室長が「企画が通ったら雇用形態に関係なくプロデューサーをさせる」というポリシーを持っていた方だったんです。「派遣でも企画を出してね」「やりたいことがあったら形にしていこうね」と言ってくれたので、3年間くらいで30本くらい企画を出し続けてました。

2024.03.27(水)
文=斎藤 岬
撮影=平松市聖