この記事の連載

 配信プラットフォームが活況を呈し、テレビの観られ方が大幅に変わりつつある今、番組のつくり方にもこれまでとは違う潮流が勃興しています。その変化の中で女性ディレクター/プロデューサーは、どのような矜持を持って自分が面白いと思うものを生み出しているのか。その仕事論やテレビ愛を聞く連載です。

 今回はお笑いコンビが絶景の中でネタを行う番組『ZEKKEI NETA CLUB』を手がけながら、自身も漫才師として「M-1」に挑戦する、二木佑香さんに話を伺いました。


中学生の頃からずっとテレビ業界志望。大学時代はお笑いサークルに所属

――最初に、北海道のテレビ局事情を教えていただけますか? 働いていらっしゃるUHB(北海道文化放送)はどんな位置付けの局なんでしょうか。

 北海道にはテレビ局が5局あって、夕方の情報番組の視聴率でヒエラルキーがだいたい決まっています。圧倒的1位はSTV(札幌テレビ)の『どさんこワイド179』。おばけ番組といわれます。次が『水曜どうでしょう』で有名なHTB(北海道テレビ)の「イチオシ!!」で、それからHBC(北海道放送)の『今日ドキッ!』があって、うちの『みんテレ』という順番ですね。ワイド番組をやっていないTVh(テレビ北海道)を除けば最下位に近いです。だから逆にかなり自由で、わりとなんでもできる雰囲気がありますね。

――二木さんは東京のご出身ですが、就職活動は全国のテレビ局を満遍なく受けられたんですか?

 キー局と準キー局の一部を受けて、地方局はうちの局だけです。キー局も準キー局もいいところまでいったけど最終的に全部落ちて一度は諦めたときに、フジテレビのインターンシップ担当者にUHBという北海道のテレビ局をおすすめされて受けてみようかなと。正直、地方局に行く気は全然なかったんですけど、最終面接では北海道に行くわけじゃないですか。「会社持ちで旅行に行ける!」って思って(笑)。東京で2回ぐらい面接があったんですけど、北海道のガイドブックを買って面接の間に読んでました。周りからはめちゃくちゃ尖って見えたでしょうね。

――すごい人がいるな、と思われていたのでは(笑)。

 でも受かった後も迷ってました。地方局ではお笑いの番組がつくれないかもしれない、と思って。それで内定をいただいている状態で制作会社のシオプロ(※)を受けたんです。そこでも内定をいただいたんですが、採用過程の最後に社長の塩谷(泰孝)さんと話をする場があって、「内定が出ているなら最初は局に行ったほうがいい。制作会社は後からでも入れるから」と言われたんですね。悩んだ結果、今の会社を選びました。そのとき「3年以内にお笑い番組をつくれなかったら東京に帰ろう」と決めたんです。結局、3年目で『ZEKKEI NETA CLUB』ができて、まだ北海道にいます。

※『ゴッドタン』(テレビ東京)、『水曜日のダウンタウン』(TBS)などを手がける。

2023.12.06(水)
文=斎藤 岬
写真=平松市聖