若手料理人が次々と独立を果たす近ごろの京都。

 確かな技をもちつつ、個性はしっかり打ち出す。その加減はどの店も絶妙で開店と同時に予約困難な店となってしまうのも納得せずにはいられない。

 予約が取れたら京都へ、そんな楽しみ方も良いものだ。


イギリス仕込みの
柔軟な発想をちりばめて

●杦(せん)

むっちり蒸した間人の鮑とアスパラガスに酸味のあるジュレを添えて。上にのるのはフルーツキャビア。

 「室町和久傳」や「菊乃井」で修業を重ね、「祇園ろはん」料理長として活躍した杉澤健さんが約1年間のイギリス生活を挟み、待望の自店を構えたのは2018年3月のこと。

大原野の筍と白魚の椀物。

 場所は五条通に近い密やかな柳馬場通。

 正統派の料理店が店を開くには少し意外な場所をものともせず、たちまち予約困難な人気店へと躍り出た。

 理由は明瞭。

たらの芽や筍、こごみなどを香ばしい胡麻ごろもで和えて。青竹の器が清々しい。

 「向こうのシェフと仕事をしたときに実感したのは頭の柔軟さ。京都だから、日本料理だからこう、ではなくてお客様を喜ばせることが第一」の気持ちが随所にちりばめられているからだ。

“丹波牛のふきのとう鍋”。出汁には刻んだふきのとうを浮かべ、クレソンやうるい、ルッコラなど、牛肉と相性のいいほろ苦さをもつ春野菜を添えた。

 調理の様子をより間近に見ることができる、途中で折れたユニークなカウンター。

 しっかりボリュームのあるコースでありながらも、最終入店は22時という時間設定も魅力。観劇などの後の遅めの食事にもちょうどいい。

 器はバカラやラリックなど繊細なガラスを織り交ぜる。

鍋は仕上げる前にプレゼンされる。料理はすべて16,000円のコースから。

 コースは看板料理の丹波牛と季節野菜の鍋がメインとなり、折々の食材を使った玉じめ丼など5種類から選べる締めのご飯まで、息もつかせぬエンターテインメントとなっている。

カウンターのほかに座敷も。

 「開店から1年が経って、これからは遊びがある料理も作っていけたら」の言葉にも期待せずにはいられない。

屋号の「杦」は杉澤さんの杉の字の異字体。

杦(せん)

所在地  京都市下京区五条通柳馬場上ル塩竈町379
電話番号 075-361-8873
営業時間 17:30~22:00 最終入店
定休日 不定休
※要予約。昼は3名以上の予約で1日1組まで(12:00~15:00)

Feature

今の京都で輝く
若手料理人の新店へ

Text=Mako Yamato
Photo=Takashi Shimizu

この記事の掲載号

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※この記事のデータは雑誌発売時のものであり、現在は異なる場合があります。