世界を旅する女性トラベルライターが、これまでデジカメのメモリーの奥に眠らせたままだった小ネタをお蔵出しするのがこのコラム。敏腕の4人が、交替で登板します。

 第203回は、大沢さつきさんが、アフリカ内陸部で体験した驚きの連続をレポートします。


チーターに会いたくて……

 今回は、世界中のトラベラーが“死ぬまでに行きたい場所”バケットリストに挙げる楽園に行く。

 南アフリカのヨハネスブルグからボツワナのマウン空港へ。そこから軽飛行機で、野生動物の待つキャンプ3カ所へと飛ぶ。

 最初のキャンプは「カラハリ中央動物保護区」にある「カラハリ・プレインズ」。マウンからおよそ1時間で滑走路に降り立ち、さらにジープでキャンプへ。

 ボツワナを訪れるのは2度目だが、今回の目的、個人的にはチーターを見ること。ミッション的にはサファリの第一人者である「ウィルダネス・サファリ」の活動を知ることだ。

 昼過ぎキャンプに着いてひと休み。夕方早速、サファリのスタートだ。

 と、キャンプを出て5分と経たないうちにチーター発見。それも2頭!

 いきなりの目的達成。

 「雨季のカラハリは、アフリカの中でも最高に野生生物の観察に適している」と聞いてはいたが、恐るべしカラハリ。こんなにかんたんにチーターに遭遇できていいのか!

 チーターは生息数が激減していて「絶滅危惧種(レッドリスト)」に指定されている。

 そんな希少な動物にのっけで遭えるという幸運。超ロングフライトもなんのそので、疲れが一気に吹き飛ぶ。

 と、1頭のチーターが後脚をケガしている。捕食者側のチーターといえど、ケガは命取り。まして自慢の脚をやられては……ライオンやハイエナに狙われたらおしまいだ。

 移動のときは先導の弟チーターが気遣って立ちどまり、後続の兄を見守っていたのが印象的だった。

 「カラハリ中央動物保護区」はアフリカ最大の保護区で、約5万平方キロもあり、なんとスイスやデンマークがすっぽり収まるスケール。さらに広大な50万平方キロほどの「カラハリ砂漠」の東にある。

 もうね。草以外、何もない。

 ポツリポツリと鹿に似たスプリングボックや長い角のオリックスの群れに遭う。

 音のない世界にときおり、“カラハリヘリコプター”の愛称をもつ賑やかなコーリー・バスタードが、バタバタと音を立てながら飛んでいく。

 草食動物、みんなで黙々草を食む。

 たまに群れずに1匹でいるスプリングボックを見かけると“大丈夫なの? ライオンとかに狙われるよ”と親心発生。サファリの最初にチーターを見たのでハラハラ、ドキドキ。

 サファリでチーターやライオンといった捕食者を見るのは美しいので楽しいが、草食動物が襲われるのはやはり悲しい。

 “自然の摂理”と分かっていてもだ。

 広大なサバンナを茜に染める夕陽を楽しんで、初日のサファリ終了。

 今晩は満天の星のもと、寝る。雨季だけど、雨の気配はなし。

 ルーフバルコニーの「スターベッド」は適度な冷気の中ふとんにくるまるという快適さだったが、いかんせん月明かりが眩しすぎて眠れない。空気が澄んでるとはこういうことなのか。さらには虫やらなんやらの鳴き声もおさまらず……。

 と、夜中の3時を過ぎた頃から月が姿を消し虫たちも眠りについて、ようやく闇と静寂の支配がはじまる。

 なんかスゴい。天の川が間近。まさに星が降ってる。

2019.03.17(日)
文・撮影=大沢さつき