vol.31 パリ

 パリで寿司は食べない。折角パリに来たのだから、出来るだけ多くのフランス料理を食べたいからである。

 しかし2017年は、2月と9月に同じ寿司屋を尋ねた。ミシュランで1ツ星をとった、花田雅芳氏率いる「SUSHI B」である。

 店は2区。フランス国立図書館横にあるルーヴォア広場に面した閑静な場所に、店を構えている。

 店に入ると、左手に鍵の形の10名ほどのカウンターが広がっており、清潔感に満ち、凛とした空気が漂っていた。

 2月に訪れた時は、焼き胡麻豆腐、グリンピースとオマールとウニ、カツオとジュレ ミョウガとワサビ添え、キャビアとポワロー、ひめじ鯛の松笠焼きなど、7品ほど出された後より、握りが登場した。

 人肌の酢飯がうまい。米の甘みに酢のうま味がなじんで、炊き具合の固さもいい。

 中では、赤身が最もよかった。きめ細やかで滑らかに歯が包まれ、ほのかに鉄分の香りが立ち上る。煮きりの量も、酢飯とのバランスもいい。

 一方日本にはない、ラングスティーヌの握りは、車エビより野性味とたくましさがあって、それが酢飯と懸命になじもうとしている姿が、いじらしかった。

 秋に出かけた際の料理は、以下の通りである。

2018.06.01(金)
文・撮影=マッキー牧元