日本の食文化の未来がここに息づく

 ご覧のように、お米とお酢、海苔以外はすべて大西洋の魚で、ほとんどがフランス産である。

 中では、スペインで獲れたというマグロの赤身が、日本でも最近出会えないような爽やかな血の香りがあって素晴らしかったが、喜ぶべきはこのネタではないのかもしれない。

 例えばラングスティーヌは、ボタンエビや甘エビよりもねっとりとした甘い色気をもって舌に広がり、それがきりりと酢と塩を効かせた酢飯と出会うと、心が焦らされる。

 一方ルージェ(赤ひめじ)の握りには、じれったいような甘みが酢飯と舞う、新たな感覚があった。

 それぞれの地で獲れた旬の食材で、日本料理を作る。そのことは、日本料理の哲学であり、異国文化を柔軟に吸収し、自分のものとしてきた日本人の精神でもある。

 フランスやヨーロッパの魚介だけを使って寿司を握る「SUSHI B」の花田さんは、そのことを体現している。

 そしてここにもまた、寿司という日本の食文化の未来が、確実に息づいているのである。

SUSHI B
●ランチコースは、58ユーロ、90ユーロ、95ユーロ、130ユーロの3通り。
●ディナーコースは95ユーロ、130ユーロ、160ユーロの3通り。
今回紹介したのはディナーの160ユーロコースとなる。
現在常備している日本酒は、「九平次」「獺祭二割三分」「麒麟山」「大七」「黒龍」。おすすめワインはブルゴーニュ。

所在地 5 rue Rameau 75002 Paris
電話番号 01-40-26-52-87
http://sushi-b-fr.com/jp/

マッキー牧元(まっきー・まきもと)
1955年東京出身。立教大学卒。(株)味の手帖 取締役編集顧問 タベアルキスト。立ち食いそばから割烹、フレンチからエスニック、スイーツから居酒屋まで、全国を飲み食べ歩く。「味の手帖」 「銀座百点」「料理王国」「東京カレンダー」「食楽」他で連載のほか、料理開発なども行う。著書に『東京 食のお作法』(文藝春秋)、『間違いだらけの鍋奉行』(講談社)、『ポテサラ酒場』(監修/辰巳出版)ほか。

Column

マッキー牧元の「いい旅には必ずうまいものあり」

立ち食いそばから割烹、フレンチからエスニック、スイーツから居酒屋まで、全国を飲み食べ歩く「タベアルキスト」のマッキー牧元さんが、旅の中で出会った美味をご紹介。ガイドブックには載っていない口コミ情報が満載です。

2018.06.01(金)
文・撮影=マッキー牧元