【WOMAN】
頰に傷のあるオスのトラネコが
江戸の人と動物達の心を癒す

 差配さんは、つるりと禿げ上がった頭に両頰の切り傷がトレードマークのおじいちゃん……と思いきや、実は猫。江戸の往来をのっしのっしと歩き回ってパトロールし、人間と動物の間に割って入っては、機転を利かせた差配(世話)を繰り出す。

 例えば、母親に捨てられた小猫を、ケンカばかりしている人間夫婦の長屋に送り込む。子猫のかわいさで夫婦のケンカを止めさせ笑顔にするばかりか、子猫の新しい家まで見繕ってしまうという寸法だ。人間と猫、どちらの気持ちも理解しているから、それができる。単なる人情ドラマじゃない。差配さんは、人間の視点から見るとトラネコだけれど、猫の視点から見た時には擬人化されている。そうした作画上の演出が、ミステリーでいうところの「叙述トリック」を可能にしている。

 笑わされ、泣かされるのみならず、驚かされる。そして、「情けは人の為ならず」の本当の意味が、実感できる。

『差配さん』(全1巻) 塩川桐子

江戸の親分ネコとして知られる“差配さん”は、あちこちでおまんまを頂戴し、夜はお布団も借りる。人間と共に過ごす時間が長いからこそ、人間たちの心も分かる。そんなトラネコが、猫絡みの事件の解決に乗り出すと——。時代劇マンガ雑誌『月刊コミック乱』掲載の全8篇を収録。
リイド社 830円

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Column

男と女のマンガ道

男と女の間には、深くて暗い川のごとき断絶が横たわる。その距離を埋めるための最高のツールが、実はマンガ。話題のマンガを読んで、互いを理解しよう!

2018.01.05(金)
文=吉田大助

CREA 2018年1月号
※この記事のデータは雑誌発売時のものであり、現在では異なる場合があります。

この記事の掲載号

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