チキンライスに対する情熱は
マレーシアがナンバーワンかも!

 最後に、われらがマレーシアのチキンライスの特徴です。マレーシアには民族ごと、地方ごとに色々なチキンライスがあり、なかでもいちばんポピュラーなのは、シンガポールと同じ、海南島をルーツにもつ海南鶏飯。中国系の料理です。

チキンはかならず骨付きで提供。「骨の周りの肉がおいしい」というのが、マレーシアの美食大原則である。新鮮な鶏を扱う店では、ハツ、砂肝などの臓物も提供している。

 そして、海南鶏飯と同じぐらい人気なのが、スパイスで香りをつけたチキンライス、「ナシ・アヤム」です。国民の半数以上を占めるマレー系民族は、こちらを好みます。

鶏をゆでる際、八角、シナモン、カルダモンなどのスパイスを加えて香りをつける。ゆであがった鶏は、さらにタレをぬってオーブンでロースト。ご飯は、チキンスープにターメリックを加え、黄色に炊き上げることが多い。

 また、マレーシア人のチキンライスへのこだわりはひじょうに強く、一人一屋台はかならずお気に入りがあり、おいしい店と聞けば、車で1時間かけて訪れることも平気です。家でもよく作るので、私の友人には、生きたまま鶏を購入し、自分の家で数日養って“体内をキレイ”にしてから、チキンライスを作る、という人もいました。鶏肉は、ほどよく弾力のある地鶏を好み、スープをごはんに回しかけて、鶏茶漬け風にするスタイルも人気です。

 共通点の多いアジアごはんには、同じ名前の料理や同じ食材を使った料理がいくつもあります。でも、それらを比べてみると、すこしずつ違いがあり、現地で“おいしい”とされる定義も様々なのです。世界は多彩で、価値観も色々。それを知るのが楽しくてたまりません。

●「アジアごはんズ」とは……

「食べ比べ」をテーマに、アジアを深く知る活動をしているユニット。ひとくくりにできないアジアの多様性に注目。アジア諸国の食文化のつながり、歴史の影響などを体験してもらうために、テーマに基づいた食べ比べイベントを定期的に開催している。

[メンバー]
・下関崇子 タイ・カルチャー料理家、ムエタイインストラクター
・伊能すみ子 アジアンフードディレクター
・浅野曜子 インドネシア料理プロデューサー、フードコーディネーター
・古川音 「マレーシアごはんの会」主催
・高島系子 ライター

マレーシアごはんの会 古川 音(ふるかわ おと)
「マレーシアごはんの会」にて、マレーシア料理店とコラボしたイベント、マレーシア人シェフに習う料理教室を企画・開催。クアラルンプールに4年滞在した経験をもち、『ニッポンの評判』(新潮新書)のマレーシア編を執筆。マレーシアごはんの会の活動のほか、情報サイト「All About」でのマレーシアライター、食文化講演も担当している。
オフィシャルサイト http://www.malaysiafoodnet.com/

Column

マレーシアごはん偏愛主義!

現地で食べたごはんのおいしさに胸をうたれ、風土と歴史が育んだ食文化のとりことなった女性ふたりによる熱烈レポート。食べた人みんなを笑顔にする、マレーシアごはんのめくるめく世界をたっぷりご堪能ください。

2017.03.09(木)
文・撮影=古川 音(マレーシアごはんの会)