季節の野菜を生かした和洋菓子のお店

麻布野菜菓子(東京・麻布十番)
甘味:いちじくのかき氷、ミニトマトのかき氷、ほかほか薩摩芋のバニラアイスクリーム添え、季節の野菜羊羹

お店の場所は麻布十番駅の1番出口から大通りを二の橋方面に80m進んだところ。

 毎年夏になるとガラス壁にかき氷のポスターが張り出される「麻布野菜菓子」は、季節の野菜を生かした和洋菓子のお店。グラフィックデザイナーの花崎年秀さんが4年前に南麻布の住宅街にお店を構えた当初は物販のみでしたが、2014年に現在地の大通り沿いに移転した際にカフェが併設されました。

店内はお菓子の販売コーナーとカフェスペースが半々で、カフェは8席。

 店内に並ぶ羊羹や最中、フィナンシェなどは、すべて野菜を使ったもの。そもそも花崎さんが野菜菓子のお店を開業することになったきっかけは、10年前、グラフィックデザイナーとして銀座の野菜懐石のお店の立ち上げに関わったことだったと言います。

 仕事を通じて築地の野菜の仲卸さんと関わるうちに、持ち前の好奇心から野菜をお菓子に生かしたいという想いが芽生え、独学と試行錯誤でお菓子のレシピを開発。

 「野菜を使うだけでなく、味も和と洋をミックスさせています。もともと異業種だったのでタブーとするものがなく、自分が美味しいと思う感覚で作っています」と言う通り、どら焼きのあんには隠し味に生クリームを、野菜の羊羹にはラム酒を利かせています。

「いちじくのかき氷」950円。

 カフェの夏の看板メニューは、野菜を使ったかき氷。その人気ぶりは、午後になるとかき氷目当ての人で行列ができるほどです。

 6種の定番かき氷の中で一番人気なのは、ふんわりした氷に、練乳とクリームチーズソース、そして生のいちじくにレモンとお砂糖を加えて作った濃厚ソースをたっぷりとかけ、最後に生のいちじくをトッピングした「いちじくのかき氷」。純氷をごく薄く削った氷は空気をたっぷりはらんで、口に入れると冷たいいちじくのソースと共にゆっくり溶けます。

 ソースは練乳とクリームチーズの濃度があるためか、口どけがソフトでなめらか。トッピングのいちじくのフレッシュ感も絶妙で、昔ながらのかき氷よりも“お手柔らか”な冷たさです。

「ミニトマトのかき氷」950円。ドリンクを注文するとカレー味の野菜チップスが付いてきます。

 そして多くの人が「いちじくのかき氷」の次に挑戦するのは、「ミニトマトのかき氷」。生のミニトマトから作った甘いソースと練乳とクリームチーズソースを合わせたソースは、まるで果物のようにフルーティーな香りと甘みが魅力的。一口味わうごとにビタミンが補給され、元気が湧いてくる味わいです。

 この野菜のかき氷、初めてメニューを見たときは「本当に美味しいの?」と半信半疑でしたが、ミニトマトの甘さは野菜というよりフルーツのようで、想像以上にスイーツらしい味わい。

 予想を超える美味しさに出合うと他の種類にも挑戦試してみたくなるのは皆同じようで、花崎さんいわく、「皆さま最初は馴染みやすいいちじくを召し上がって、次にミニトマトを試し、これなら大丈夫だと安心したらほおずき、セロリ、茄子を順に試されるようです」。

 セロリはまるでパイナップル、ほおずきはトロピカルフルーツのような甘酸っぱさで、練乳小豆と合わせた茄子はリンゴを思わせる味わいだとか。次はどれを試そうかと想い悩むのも、楽しい限りです。

2016.08.21(日)
文・撮影=小松めぐみ