◆ 深川製磁

筆一本で、微妙なブルーの濃淡をつける下絵付の過程。作品によって、多くの筆を使い分ける。熟練の職人さんには女性も多い。

 時は明治。1900年に開催されたパリ万博に高さ2メートルもの豪華な大花瓶を出品し、金牌を受賞したのが深川製磁の初代、深川忠次だ。有田ならではの緻密な文様と色づかいが施されている一方で、高さ2メートルというダイナミズム。そしてこの作品の完成を可能にした深川製磁の高い技術力と心意気に、当時の人々もさぞかし驚き、感心したことだろう。深川製磁の原点は、まさにこのときにある。

下絵付をした器は、本焼の前に釉薬を施す。製品によって釉薬も数十種類あり、均一の厚さにするには熟練の技が必要。

 今も変わらず自社内で粘土を精製し、約600種の絵具を調合。100人に及ぶ職人の手仕事で、“フカガワブルー”と呼ばれる澄んだ瑠璃色は生まれている。この素晴らしい財産をもとに、「伝統技術を持ち続けているからこそ、革新ができる」と4代目社長の深川一太さんは言う。

窯の中の酸素を制限する還元焼成で1350度まで焼き上げると、青白い磁肌と深いブルーが生まれる。

 そんな深川製磁の魅力をたっぷり味わえる「チャイナ・オン・ザ・パーク」にも足を運んでみた。緑豊かなエリアに広がる広大な敷地の中に、ギャラリーのほか、アウトレットショップ、レストランを完備。ギャラリー「忠次舘」では、パリ万博に出展した大花瓶を見ることもできる。

 「古いものと新しいものをはっきり分けたくはない。時間をかけてつくられたいいものは、必ず残っていきます。私たちは、今、100年先のアンティークを創っているのです」

ギャラリー「忠次舘」では、深川製磁の歴史をたどる贅沢なコレクションから、海外で高い評価を受けているモダンで愛らしい茶器まで、いちどに目にすることができる。

深川製磁(ふかがわせいじ)
URL http://www.fukagawa-seiji.co.jp/

●深川製磁本店
電話番号 0955-42-5215
営業時間 9:00~17:00
定休日 無休

●チャイナ・オン・ザ・パーク
電話番号 0955-46-3900
営業時間 9:00~17:30
定休日 火曜


「ARITA SELECTION きんしゃい有田豆皿紀行」

 有田の地で日本ではじめて磁器が焼かれた1616年から今年で400年。それを記念した「きんしゃい有田豆皿紀行」プロジェクトでは、26の窯元の豆皿を紹介している。

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