純粋菜食主義者専用メキシコ料理店のタコスの味は?

モダンな外観の「グラシアス・マドレ」。

 今回ご紹介するレストランは、東京でいえば代官山辺り、セレクトショップが点在するミッション地区にあるメキシコ料理店「Gracias Madre(グラシアス・マドレ)」である。店名の意味は「お母さんありがとう」。なんという素敵な名前だろう。ビーガン専門のメキシコ料理屋である。

 ビーガンはベジタリアンの中でも最も厳格な純粋菜食主義者であり、そうした規律とチーズや肉類を多用するメキシコ料理は結びつくのだろうか? 頭をひねりながら店に入る。

 店はベジタリアンにありがちな陰気くささがまったくない。オレンジ色に塗られた壁を持つ半テラス席と、床、壁、椅子、テーブルがすべて木造りの50人は入る室内席があって、実にモダンである。

テラス席の美人女性2人組。

 テラス席には女性の2人連れ客が2組いたが、いずれも美人でオシャレだった。彼女たちにとって、ビーガンの店を選ぶことが、ハイセンスなのだろうか。もし訪れるなら、昼下がりにこのテラス席に座るといい。陽光がこぼれる席で心地よい時間を過ごせるだろう。

 頼んだのは、タコス(16ドル)。6種類の詰め物から3種類選び、3枚のトルティーヤに詰めてもらう。選んだ具は、(1)「カラバサ」クミン風味のズッキーニソテー。(2)「ホンゴス」ニンニク風味のマッシュルームソテー。(3)「ラジャス」パブラノチリとオニオンのロースト。

3種類のタコス。

 なによりまず、タコスの皮がおいしい。焦げ茶色の皮は、噛んだ瞬間にとうもろこしの香りが弾け、噛み締めると甘みがあって、ほんのりと苦みが顔を出す。なんとも存在感のある皮である。「ビーガンだぞ、オーガニックだぞ」という力強さと野趣があって、これに比べりゃ日本のタコスなんて、タコス未満といってもいい。

 その皮のたくましさに、野菜や茸の香りが調和し、カシューナッツで作ったチーズソースのコクが追いかける。食べて目をつぶると、畑の中に立っているような清々しい気分になる。また、手前に置かれたチョコレート色の黒豆煮も、豆の甘みが濃厚で、心が満たされる。

 本来の野菜と穀物の力強さがあるので、一緒に頼んだIPAのビールともぴたりと合う。オーガニックならではのたくましさにうなる。さすがオーガニック先進国である。

Gracias Madre(グラシアス・マドレ)
所在地 2211 Mission St, San Francisco, CA 94110
電話番号 415-683-1346
URL http://www.gracias-madre.com/

2016.02.04(木)
文・撮影=マッキー牧元