【BLの受け属性は拡張する。】

 読まないひとに限って、いまだに「BLって瞳に星が入ったフリルの美少年が、年上の男に愛されたり、薔薇を背負った美少年同士が悲恋に落ちて、死んだりするんでしょ?」と揶揄する節がある。『風と木の詩』(竹宮惠子)に代表されるBLの始祖的な時代の少女マンガの名作群や、耽美雑誌『June』の悲劇的な作風傾向に加え、ギャグマンガ『パタリロ!』(魔夜峰央)の名脇役・バンコラン少佐×美少年マライヒ……。思うにこれらが混ざって醸し出す印象が未だに強いのかもしれませんね。しかし、今のBLで受けが美少年という設定は、もはや主流ではないのです。

恋はひとを野蛮人にする。むさ苦しい髭面受けが最高!

 BLは日進月歩で新しい関係性とキャラ属性を生み出しています。中でも、作品ごとに受けキャラのストライクゾーンを広げ続ける「萌え拡張マイスター」こと、鈴木ツタさんに注目です。

 連載中の『BARBARITIES』は、むさ苦しい無精髭受けに対して、攻めがきらきらしい色男。美貌のカニング子爵アダムは、尊敬する司法卿モンタギュー卿の警護を拝命する。無愛想な老卿に打ち解けてもらおうと、アダムは卿の甥ジョエルに近づく。彼が卿のために事件を探っていることを知ったアダムは、捜査対象の貴婦人を欺くために、ジョエルにキスの特訓を提案。男女ともイケル口のアダムは、地味で性に奥手で無精髭のジョエルにとって「万年、お花畑、野蛮人」な天敵だ。

 本作のタイトルは野蛮人。「この美貌の野蛮人の重篤な恋愛病さえなければ」友人になれるのにと悩む恋愛音痴のジョエルの恋の行方はいかに!? こんな面白いBLは案ずるより、読むが易しです。

『BARBARITIES(バーバリティース)』(既刊1巻) 鈴木ツタ

博愛主義の美しい貴族×堅物な司法卿の甥のラブストーリー。 架空の王国を舞台にした歴史BLは、甥の正体を巡る謎、宗教と政治の駆け引きも読みどころ。脇キャラの列強隣国の従者×腹黒王子の受け属性にも萌え上がること必至です。
リブレ出版 713円
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福田里香 (ふくだりか)
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Column

BLマンガ基礎講座

BLはボーイズラブの略。ざっくり定義を述べると「主に女性の読者に向けて描かれた男同士の恋愛をテーマにした作品」。実は名作が満載のこのジャンル、食わず嫌いはもったいない!

2015.11.06(金)
文=福田里香

CREA 2015年11月号
※この記事のデータは雑誌発売時のものであり、現在では異なる場合があります。

この記事の掲載号

京都ひとりガイド

CREA 2015年11月号

食べて、遊んで、秋の旅
京都ひとりガイド

定価780円