血縁関係のない姉と弟を中心に奇妙な恋愛を描く、五十嵐藍の4コマ漫画を映画化した『鬼灯さん家のアネキ』で主人公・吾朗を演じた前野朋哉。監督としても高い評価を受ける、気になる個性派俳優が満を持して登場!

石井裕也監督との出会いから監督志望に

――近年、数々の映画関係者を輩出している大阪芸術大学芸術学部を卒業された前野さんですが、映画に興味を持ち始めたきっかけを教えてください。

 中学生の頃に、家の近くの映画館にハリウッドのメジャー映画を観に行きまくっていて、毎日、映画のことばかり考えていました。ちょうど、『マトリックス』『スター・ウォーズ エピソード1/ファントム・メナス』『シックス・センス』『エネミー・オブ・アメリカ』『6デイズ/7ナイツ』とかの頃です(笑)。それで、ある日「映画が仕事になったら、人生楽しくなるのかな?」と思ったんですよね。だから、誰々みたいな役者さんになりたいっていうんじゃなく、技術部のスタッフだったり、宣伝をしたいという感じで、映画に携わる仕事をしたいと思ったんです。

――その後、石井裕也監督と出会い、05年に石井監督の『剥き出しにっぽん』に参加されますよね?

 最初に照明助手のスタッフとして関わった作品が、大学の2コ上の先輩だった石井監督の『剥き出しにっぽん』だったんですが、この作品では当日来る予定だった俳優が来なくて、その代わりに僕も(役者で)出ることになったんです。それまで、好きな映画といえば、SF映画やアクション映画だったんですけれど、石井さんの現場を体験したことや、同じころ先輩の山下敦弘監督の作品を観たことで、日常を描いた人間ドラマの面白さに気付き始めたんです。そういう意味では、『剥き出しにっぽん』は自分の転機になった作品だと思います。完成して、この作品を試写で観たときには、震えながら「監督をやりたい!」と思いました。

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2014.09.05(金)
文=くれい響
写真=深野未季