出産・育児は人生に明るい区切りをつけてくれる

Q. 子どもの誕生はご自身の価値観を変えましたか?

 37歳で出産、現在2歳男児を育てています。

 この年齢での出産・育児によって一気に老けてしまうんじゃないかと恐怖を感じていましたが、じっさいのところ体力の衰えよりも顕著だったのは、自分自身の価値観の変化でした。それはもう、これまでと違った人生を生き直すのではないかと思えるほどなのです。

 未映子さんは、ご自身の価値観に変化がありましたか? また、それは創作活動にどのように影響していますか?(お松/39歳・会社員)

A. 自分が「半分かそれ以上は終わった存在」になった

 お松さんの価値観がどんなふうに変化されたのか具体的なことは書かれていませんでしたが、なんだか素敵な方向への変化だったんじゃないかなーという気がしています!

 子どもをもつと、それまでの世界とは確実にちがう世界を生きることにもなりますよね。もっとも、それと並行してこれまでの世界も同時に走っているから、そのせめぎあいが大変なわけでもあるのですが……。

 わたしにも、もちろん様々な変化がありました。いちばん大きかったのは、自分というものが、とても喜ばしい意味で「半分かそれ以上は終わった存在」になったということです。もちろん生きてるし、悩むし、欲望もあるし、仕事もたくさんしたいし、ほとんど何も変わってないんだけれど、でも本質的な部分が変わったというか。なんというか、「これからの善きものは、すべて子どもらに」という感じで、自分の身に起きることがいいことでも悪いことでも、そんなのもうべつにたいしたことじゃないよなー、みたいな、そんな気持ちでいます。人生に明るい区切りがついたような感じがします。今後また変わるかもしれないけれど。

 しかし、それらの変化が創作になにか影響を及ぼしたかというと、それがそうでもないのですよね……。小説は、もう何年も前からつぎに挑戦したいこと、そのつぎは、という感じで種のようなものがあらわれてきてそれを遂行するという方法なので(今のところ)、実生活の要素の入る余地があまりないのだと思います。だから、創作における価値観に大きな変化はなかったかなあ……でも、無意識のレベルやこまかいところでは、もちろん影響はあると思います。そしてそれについては、あまり自覚的にならないでおこうと思っています! ところで、2歳の男の子、かわいいですよね。どうか健やかで楽しい日々を過ごされますように!

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2014.09.06(土)