「VIJUAL KEI」という言葉は世界に広まっている

伊藤 まぁ、CDを特典で売ってる現象へのアンチテーゼ的な見せ方をしながらも、金爆的な悪ふざけエンターテイメント。CDが売れなくても得るものはある、という確信のもとに成り立っている企画なんだとは思いますね。しっかり話題は作れているし、販促予想でこれだけハードルを下げておけば、仮にあまり売れなくても“負けた”という印象は持たれない。

山口 なるほど。彼らの存在は非常に興味深いです。作品ではなく「存在」や「生き方」みたいなものが商品になっている印象で、それを本人達も確信犯的にわかっている。お堅い音楽評論家が「あんなの音楽じゃない」って批判しようとしても、もともと演奏しない「エアーバンド」なので、批判している方がバカみたいになる。

伊藤 ですよね。このシングルに関して鬼龍院翔のインタビュー動画を見ましたが、彼は常にふざけているように見えるんですけど、でも本当に音楽が好きなんだなって感じがしました。

山口 この曲のレコーディングでは、ドラムに村上“PONTA”秀一、ベースに根岸孝旨、ピアノに難波弘之という日本最高級のミュージシャンが参加していますね。音楽好きじゃなければありえない選択ですね。

伊藤 ポンタさんは、山口さんの会社でマネージメントしてたんですよね?

山口 10年以上やらせていただきました。数々の伝説を持つ日本一のドラマーですね。ポンタさんから学んだことは僕もたくさんありますよ。日本の音楽シーンの蓄積を活かすのは大切だと思うので、ゴールデンボンバーが、こういうミュージシャンと作品を創っているのは嬉しいですね。そもそもビジュアル系自体が、日本独自の音楽ジャンルです。一時期のUKロックやヘビーメタルなどの影響を受けながら、独特な発展を遂げました。歌謡曲的なメロディや緻密で構築的な音作りなどで、海外では「J-ROCK」っていうと、ビジュアル系のことを指す国も多いですし、「VISUAL KEI」という言葉も広まっています。

伊藤 日本語がそのまま世界の共通語になっているケースですよね。SAMURAI、NINJAなど時代映画から広まった物や、JUDO、KARATE、SUMOなどの日本発祥の格闘技はもちろん、SUSHI、SAKE、UMAMIなど食に関する言葉も多く世界で使われていますけど、これらの言葉はやはり日本独自の文化に根差したものです。そういう意味では「VISUAL KEI」というのも日本で独自に進化したロック・ポップスの形です。

山口 鬼龍院翔は、そんなビジュアル系の歴史へのリスペクトと愛情があって、おそらくすごい音楽オタクで、そこに乗っかって自分の表現をしているのではないですか?

伊藤 ですね。根っからのJポップファンなんだと思いますよ(笑)。彼がスタッフの反対を押し切ってまで今回のような販促ゼロ企画をするってことも、金爆のように一度ブレイクしてしまったバンドにとっては凄くチャレンジングなこと。「女々しくて」の大ヒットからくる余裕もあるとは思いますが、彼を動かしている一番の力は、音楽への想いなんだと感じました。

山口 なるほど。まさに、その生き方や思想に対して、ファンがどこまでついてきてくれるかが今回の見所ですね。

伊藤 はい。しかし、「ローラの傷だらけ」を聴いてみての印象は、平均的なビジュアル系ロックだなぁ~という感じ。あの金爆が「音楽だけで売りたい」と大風呂敷を広げたんだから、こっちとしてもハードルを上げざるを得ない。個人的な感想ですが、今回の曲に「女々しくて」のようなヒット性は感じませんでしたねぇ。山口さんはどう感じましたか?

山口 あれ、辛口ですね。僕はカップリングも含めて、3曲とも好きでしたよ。今回の試みが成功して欲しいです。

ゴールデンボンバー「ローラの傷だらけ」
Zany Zap 2014年8月20日発売
461円(税抜)
■通常盤1形態のみのリリース、ジャケット周りに写真は一切使われておらず映像特典もなし、そして発売に伴う握手会および購入特典はなし……。時流に逆らうがごとく、とにかく音楽だけに特化したニューシングル。表題曲は「JOYSOUND」タイアップソング。
■「ローラの傷だらけ」作詞・作曲/鬼龍院翔 編曲/鬼龍院翔、tatsuo
■オフィシャルサイトURL http://sound.jp/g_b/

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2014.08.12(火)
文=山口哲一、伊藤涼

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