日本のオペラ界を導いた藤原歌劇団が誇る『蝶々夫人』

3人並んだ蝶々さん。お稽古も浴衣姿で。左から山口安紀子(6/28出演)、清水知子(6/27出演)、佐藤康子(6/29出演)。

 今年で創立80周年を迎える藤原歌劇団は、日本初の本格的オペラ団体として公演活動を続けてきた由緒ある歌劇団。1934年6月に日比谷公会堂で行われたプッチーニ『ラ・ボエーム』で産声をあげ、以後、日本初演を含む80作超のオペラを上演してきました。

 名歌手でもあった創始者の藤原義江(大変な美男子)が、自身の伝記で語った歌劇団結成の動機はとてもシンプル。「歌いたいオペラを片っ端から歌いたい」――当時アメリカやヨーロッパで意にそぐわない役ばかりを与えられた屈辱を覆すために、日本人主体のオペラを上演したい……という情熱が、自らのオペラ劇団の発足へとつながったのです。

 今年に入ってから、日本のオペラ界は「蝶々さんイヤー」の趣を呈しているけど、藤原歌劇団が6月に80周年記念公演として上演するプロダクションは、ある意味「究極モノ」。この歌劇団が最も得意とするオペラでもあり、日本の美を究めた伝説的プロダクションは長年愛され続けてきている。今回主役の蝶々さんを歌う三人……清水知子さん、山口安紀子さん、佐藤康子さんに、「蝶々夫人」のリアルな(?)舞台裏について聞いてきました。

<次のページ> リリック・ソプラノにとってはいつか絶対に歌いたい役

2014.06.25(水)
文=小田島久恵
撮影=鈴木七絵