ある書店員さんを訪ねて津田沼に来てみたら、すごい本の街だった。くまざわ書店、TSUTAYA、芳林堂書店、昭和堂、ヴィレッジヴァンガード……、駆け足で回った本屋さんだけでも、便利な駅ナカ店、映像化作品に強い店、コミック・ラノベに強い店、サブカルに特化した店と、バラエティ豊か。取材日が給料日後の週末だったこともあってか、何冊も本を抱えてレジに並ぶ「大人買い」をする人も見かけた。それぞれ売り場も売れ筋も違って、豊かなバリエーションがある。

 本の街というと反射的に神保町(東京・神田神保町)と思ってしまうが、神保町は古書店が多くて新刊書店はさほど多くない。新刊書店で比較するなら、津田沼は神保町に負けない本の街だ。厳しい競合争いで過当競争になりそうなものだが、それぞれ賑わって見えた(もちろん、競争は激しく商売は厳しいとは思うのだが、「大人買い」の印象だろうか)。同じ総武沿線でも、特に津田沼に大手、中堅、地元の書店が集まっているように思えるのは、おそらく気のせいではない。本は本を呼び、本屋は読者を集め、読者が本屋を呼び、本の街が作られる。この好循環仮説が正しいかは、この街に住んで、毎日通わないとわからないようにも思うので、この辺でやめておこう。

JR総武・横須賀線で東京駅から約30分、本の街・津田沼。

 丸善津田沼店は、本の街・津田沼でも最大のフロア面積を誇る地域一番店だ。フロアは2階、3階に分かれ、奥に長い作りもあって、売り場ごとにかなり雰囲気が違う。もちろん、品揃えは充実していて、売れるものをちゃんと置いているのではあるが、ところどころにあるオススメコーナーやフェアはユニークで面白い。実用書担当の村上由夏さんによると、他の本屋さんでは見つからなかった本を探して、マニアックな本、専門的な本が売れるという。地図やガイドでは「こんな地域が!」というタイトルが売れたり、専門的な山岳ガイド本が売れたりする。取材時は、新入学に向けた手作り本のコーナーを作っていたが、手芸本でも、同じビルに手芸店ユザワヤがあることもあってか、骨のある本格洋裁本から、おしゃれ小物手作り本まで幅広い。

丸善津田沼店、エントランスのフェアは毎回ユニーク。
手芸本の売り場、基礎から本格まで幅広い品揃え。

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2014.03.15(土)
文・撮影=小寺律