作詞・作曲家コール・ポーターによるブロードウェイ・ミュージカル「エニシング・ゴーズ」で、恋の暴走を巻き起こすビリーを演じる田代万里生、29歳。ミュージカル俳優としてはもちろん、ソロの声楽家やヴォーカルグループ「エスコルタ」メンバーとしても活躍する彼に、自身の音楽人生を振り返ってもらった。

ピアノにヴァイオリン、トランペットも習った少年時代

――テノール歌手であるお父さんとピアノ講師であるお母さんを持つ田代さんだけに、幼少から常に音楽に囲まれていたのでしょうか?

 そうですね。平日、土日に関わらず、毎日のように、父と母の生徒さんがレッスンに来ていましたから。だから、レコードをかけて音楽が流れるというよりは、ピアノの音と歌声がリアルに聞こえてくる感じ。レッスンがないときは、父が歌っていました(笑)。幼い頃からそんな状況が当たり前だったので、TVを見たり、宿題をしているときに音楽が聞こえても、気にならなかったですね。

――そんななか、3歳からピアノを、7歳からヴァイオリン、13歳からトランペットを習い始めるわけですが、きっかけは何だったのでしょうか?

 全部、僕の意志ですね。ピアノは家に習いに来る人がいることで、小さい僕にとっては、グランドピアノが大きいおもちゃに見えてしょうがなかったんですよ。でも、触りたくても触らせてもらえない。だから、その流れでピアノを習うことになったんです(笑)。ヴァイオリンは、父のオペラをよく見に行っていたんですが、オーケストラピットで弦と弓をこすらせてもらったときに、あの音が出る感覚に惹かれたんです。それでやりたい、やりたいってダダをこねました。

――それで、すぐにヴァイオリンは習わせてもらえました?

 すぐには習わせてもらえなかったんです。でも、1年間言い続けていたら、おばあちゃんが買ってくれました。だったら習うしかない、という流れになって……(笑)。その後、小5のときに足をケガしてしまって、立って練習することができなくなり、ヴァイオリンは辞めてしまったんですね。トランペットは、中学生でブラスバンド部に入ったときに、あのキラキラな感じに惹かれて始めました。そして、声変わりが終わってからは、声楽を本格的に始めるようになりました。

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2013.09.20(金)
text:Hibiki Kurei
photographs:Tadashi Hosoda
hair&make-up:Yasuhiro Fujii(igloo)