私が生まれ育った神戸の街では、古くから何種類ものボンボンショコラから1個、2個と選んで買えるショップがありました。
フランス人のパティシエが営む小さなお店でも、冬になるとショウケースに何種類ものボンボンショコラが並び、ケーキを買おうか、ショコラにしようか、いつも迷ったものでした。
新神戸近くには、マダムが手作りしたチョコレートが買える隠れ家のような一軒家のお店もあったのです(どのお店も、今はありません)。
バレンタインデーにむけて、年々ヒートアップするチョコレート商戦。この季節、毎年、新しいチョコレートが登場するので、ドキドキしながらチェックしています。
今年新たに見つけたのは、神戸に工房を構える「JHOICE」。丈池武志さんがひとりで丁寧に作っている希少なショコラです。
丈池さんが開業したのは、2018年1月。1982年、徳島県出身で、料理とデザインに興味があり、ケーキ職人の道に進んだのだそう。
大阪で数店舗を展開する老舗ケーキ屋で修業した後、神戸の有名ホテル・レストランでパティシエとして活躍。
働きながら、チョコレートの知識や技術を習得し、コンクールなどに出品するなどして腕を磨くうち、チョコレートの魅力に強く魅かれるようになったと言います。
「チョコの可能性をもっと深く広く探っていきたいと思うようになった」と丈池さん。
それだけでなく、材料であるカカオに注目。生産地や生産者のことをもっと知りたいと、ベトナムのカカオ農園も訪ねます。
「昨年は現地で収穫や焙煎にも携わり、カカオの魅力と可能性を実感しました。チョコレートやカカオについての色々をいっぱい伝えたい」と、店舗を持たず、あちこちのイベントや依頼があった場所に出向いて、直接、買い手や食べ手に笑顔で語りかけています。
丈池さんが作るのは、カラダにいいチョコレート。
使用するのはミネラルを多く含むてんさい糖で、さらに、糖度を低く抑えています。そして、口溶けがいいよう水分量も多め。
そのため、賞味期限が短い。「冷凍保存しない、フレッシュなチョコを提供したい」と丈池さん。
そして、ガナッシュに使う素材は、兵庫県産のものがメイン。
神戸市北区・オーガニックファーム&ガーデンヒフミさんの有機ホーリーバジル、淡路島・平岡農園のレモン、淡路島・五色浜のおのころ雫塩……。
「日本の素晴らしい食材と合わせたチョコレートを世界に発信したい」。丈池さんの夢は大きく広がります。
2019.02.10(日)
文=そおだよおこ
撮影=上田浩江