ロック、歌謡曲、ヒップホップ、テクノなど、変幻自在に幅広すぎる最先端のサウンドを世に送るかと思えば、勢い余って、タレント、文筆家、画家としても活躍。音楽界きっての才人、近田春夫がその67年の半生を自ら語るトークイベントが、2018年6月16日(土)、青山「本の場所」にて開催された。その模様をスペシャル連載としてお届けします!

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ブリヂストンの創業者の孫と

会場となった「本の場所」は、30人も入れば満員の小ぢんまりとしたスペース。興味深いトークに会場は熱を帯びた。

 私は、クラシックのピアノをずっと習っていたわけですが、高校生ぐらいになって、クラシックは自分には無理だということに気づいたんです。

 ちょうどその頃、世の中ではロックだとかグループサウンズだとかが流行っていました。

 そういう音楽というのは、やっている人たちはどこか反抗的だし、音自体も非常に刺激的で、悪いもののように聞こえてきた。

 やっぱり子どもの頃から悪いことは好きだったものですから、たちまちその手の音楽に目覚めました。

 クラシックの勉強とは別に、中学校の頃からバンドを始めていたんです。だんだんそっちに夢中になっていったんですが、そのうち、自分の持っている能力と、周りの友達の能力とのレベルの違いに、ズレというか歯がゆさを覚えるようになってきた。

 それは自分が高校で進級に失敗したぐらいのこと。音楽に夢中になって、学校から帰った後、いわゆるディスコみたいなところに通ったりしていたものですから、その一方、勉強する時間はどんどんどんどん少なくなっていったわけですけど。

 僕は幼稚舎からずっと慶應だったんですが、学校の先輩に成毛滋さんという方がいました。

 この方はザ・フィンガーズというグループサウンズに在籍していたギタリストで、日本のロックの黎明期を切り開くわけですが、もともと、ブリヂストンの創業者の孫なんですね。

 だから、ものすごいド金持ち。家に行ったら、プールはあるわ、空手の道場はあるわ……。

 僕が高校2年だったか3年だったかの時に、その成毛さんが、彼の親戚にあたる朝吹亮二君という人を紹介してくれました。

 ついこの間まで慶應大学で教授としてフランス文学を教えていたんですけど、当時はとてもそういう人には思えなかった(笑)。遊び人というか、お洒落ばっかり気にしてる坊ちゃんという印象しか残っていない。

 なお、この朝吹君の娘さんが、芥川賞を受賞した作家の朝吹真理子さんとなります。

2018.12.19(水)
構成=下井草 秀(文化デリック)
撮影=釜谷洋史