ロック、歌謡曲、ヒップホップ、テクノなど、変幻自在に幅広すぎる最先端のサウンドを世に送るかと思えば、勢い余って、タレント、文筆家、画家としても活躍。音楽界きっての才人、近田春夫がその67年の半生を自ら語るトークイベントが、2018年6月16日(土)、青山「本の場所」にて開催された。その模様をスペシャル連載としてお届けします!


▼talk01
慶應幼稚舎の入試会場で大喧嘩

イベント中は、近田氏がiPhoneのアプリを用いて描いた数々の絵画がスクリーンに投影された。
イベント中は、近田氏がiPhoneのアプリを用いて描いた数々の絵画がスクリーンに投影された。

 ここでまず、皆様に宣言しておかなきゃならないことは、私は本当に天才だという事実なんです。

 これはしょうがないことで、「あの人は太りやすいよね」とか、「あの人はちょっと近視気味だよね」とか、そういうのと同じ、肉体的なひとつの特徴でしかない。

 天才であることを自覚したのは、幼稚園の頃。当時、IQ、つまり知能指数を測ることが世の中でブームになっていたんです。それで、親が私を連れてIQ測定に行った。

 そしたら、これは書類が残ってないから信用していただけるかどうかは別として、IQが169ありました。本当なんですよ。

 そのIQだったら慶應幼稚舎も一発で受かるんじゃないかと父親が言い出しまして、一切塾とかにも行かず、準備ゼロで幼稚舎の試験を受けたんです。

 ただ、小さな頃からきかん坊というかやんちゃだったものですから、受験会場で、他の子どもと取っ組み合いを始めてしまった。自分ではよく覚えていないんですが、先生がとっさに止めに入ったぐらいの大喧嘩だったそうです。

 僕に付き添っていた母親はそれを見て、どれだけ成績がよくてもさすがに受からないだろうなとあきらめたらしいんですが……結果は合格だった。

 試験そのものは拍子抜けするほど簡単でした。床に川の絵が描いてあって、そこに並ぶクリップの付いた紙製の魚を糸の先に磁石の付いた釣り竿で釣り上げたり、おもちゃみたいなものを与えられて、それを組み立てたり、そんな感じ。

 面接では、先生からいろいろと質問を受けたんですけど、その内容が子ども心にもあまりにつまらないものばっかりだったから、全部適当に答えてて。

 まあ、僕は知能指数こそ高かったけど、ものすごく幼稚だったもので、入試という概念がまったく把握できていなかった。

 それで、ものすごくリラックスして試験に臨むことができたのがよかったんでしょうね。

2018.10.27(土)
構成=下井草 秀(文化デリック)
撮影=釜谷洋史