青々とした実をつけた
アルガンの林へピクニック

色とりどりのグラスに注がれる甘いミントティー。最初は「甘すぎる!」と思っても、いつしかその甘さが心地よくなるのは、気候のせい?

 昼食後は、今回のプレストリップのハイライト、バスを連ねてアルガンの林へのピクニックに出発だ。バスはまずアガディールから大西洋を望む道路を北上し、ときおり風光明媚なビーチに面した高台で停まる。総勢約50名の私たちはバスを降り、スマートフォンやタブレットを片手に目前に広がる絶景を写真に収めては、歓声を上げる。

 気温はぐんぐんと上がり、既に34度を超えていた。やがてバスは海を背に、山間へとハンドルを切ると、両サイドにアルガンの大きな木が見えてきた。そこからはひたすら青々とした実をつけたアルガンの林、林、林。澄んだ青空にアルガンの木の緑、赤茶けた大地のなかに、巨大な白いテントが現れると、そこがお茶会の会場だった。

アルガンの林の中に設営されたピクニック用テント。不思議の国の夢のお茶会が、ベルベル音楽の調べと共に始まった。

 白いベルベル風衣装に身を包んだミュージシャンたちが、歓迎の音楽を奏でる。手を差し出されると、それはもう「一緒に踊れ」の合図だ。テントの中では銀のポットにたっぷりのミントティが用意され、テーブルの上にはホブスと呼ばれるモロッコパンにアルガンオイルや蜂蜜、アムルー(アルガンオイル&蜂蜜&アーモンドで作るペースト)、モロッコ菓子やナツメヤシ、ナッツ類が所狭しと並ぶ。

 色とりどりの絨毯が敷かれ、クッションを椅子にしてリラックスしながらお茶を飲む。モロッコは湿度が低いので、外気は34度でも日陰に入れば涼しい。コスメ用アルガンオイルは、取り出した仁をそのままコールドプレスするが、食用オイルは、仁を一旦ローストしてから搾るのでとても香ばしい。

 ちなみにテントの中にはモロッコならではのおもてなし、手足にアラベスク模様のヘンナを描いてもらえるヘンナタトゥーのブースもあり、参加者たちに大人気だった。

お茶会のアトラクション、ヘンナタトゥー。幾何学模様を反復していくアラベスク模様には、植物のモチーフが使われることが多い。

モロッコならではの
おもてなしでリラックス

 夕方5時頃、バスは再びアガディールの街に戻り、私たちは迷路のようなスークでお買物をしたり、ホテルでリラックスしたりした後、午後8時過ぎに海辺のマリーナ内にあるレストランに集合し、フレンチ風ディナーを楽しんだ。その頃にはみんな打ち解けて、各国チーム入り乱れて夜が更けるまでおしゃべりを楽しんだ。

左:リヤドの部屋に戻ると、お茶と一緒にモロッカン・スイーツのサービスが。ついつい手が出る魔術的美味しさにうっとり。
右:夜になると全く趣を変えるリヤド・ヴィラ・ブランシュ。装飾ランプでライトアップされたエントランスがエキゾチック。

 プレスツアーはこれで一旦終了。翌日早朝のフライトで、大半の参加者はパリに戻り、ケラスターゼの研究ラボを訪問することになっている。私たちはマラケシュで仕事が控えていたので、リヤドでゆっくりと朝食を済ませてから帰途についた。

この地でしか育たないアルガンの林は、大地の砂漠化をも防ぎ、ユネスコの生物保護地域に指定されている。
雨がふらなくても枯れることなく、地中の奥深くにある地下水を吸い上げて自生するアルガン。その貴重な宝物を現地では“人生の果実”とも呼んでいる。

 ちなみにアルガンの木が茂るモロッコのアガディールからエッサウィラ一帯を、現地の人々は“神様に選ばれた土地”と呼ぶ。なぜならアルガンは不思議なことに、それ以外のどの場所でも育たないからだ。そんな約束の地で開かれた2泊3日のプレスツアーは、貴重な経験や出会いがタペストリーのように重なり合った、珠玉の体験だった。

ケラスターゼ
http://www.kerastase.jp/

岡本翔子(おかもとしょうこ)
占星術家。ロンドンにある英国占星術協会で心理学をベースにした占星術を学ぶ。CREAでは創刊号から星占いを担当。月に関する著作・翻訳も多く、月の満ち欠けを記した手帳『MOON BOOK』は、10年以上続くロングセラーに。モロッコへの造詣が深く、2017年GWには「風の旅行社」で「砂漠とバラと迷宮のモロッコツアー」を企画・監修。砂漠マニアで、サハラ砂漠のラグジュアリーなグランピング取材も手がけている。
公式サイト http://okamotoshoko.com
公式ブログ http://ameblo.jp/okamotoshoko
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★毎年好評の月の満ち欠けを記した手帳、『MOON BOOK 2017』(ディスカヴァー)が好評発売中! https://www.d21.co.jp/diary/moonbook

2017.06.09(金)
文=岡本翔子
撮影=齋藤順子