ローマ帝国の遺跡を擁する農園の奥様は日本人!

青いテイスティンググラスをまず30℃に温めて、そこに入れたオリーブオイルを8名で評価。

 翌日、オリーブオイルの質を等級分けするための、人間の舌で評価する“官能評価”の現場を見せてもらうため、カラブリア州農業調査評議会に行く。

 「オリーブオイルには、抗酸化作用のあるポリフェノールまたはフェノール酸類、お肌によいビタミンE、コレステロールを抑制するビタミンA、新陳代謝を促すスクアレンなど健康によい成分がいろいろと含まれています」というレクチャーで、改めてオリーブオイルの成分や効能について聞いた後、官能評価をする検査室を見学。

 ここでは、EUで2015年に改正された一番新しい規則に従って、8名のテイスターが個別のブースに座って、専用の青いグラスを使って官能評価をする。

他の人の評価が見えないように個別ブースになっている。

 舌・口全体・喉を使って、オリーブオイルのフレッシュさ、フルーティさの微妙なところを判断するという。フルーティさの他に苦味、辛味というのが、よいオリーブオイルという評価につながるポジティブな属性になる。ピリリとした辛味は、質のよいオイルの証なのだ。

ガッティ家農園からの青い海一望の素晴らしい眺め。

 最後に訪れたのは、イオニア海の絶景が一望できるコパネッロ岬の丘でオーガニック・エキストラバージン・オリーブオイルを造るガッティ家農園。にこやかに迎えてくださったのは、農園主のジョヴァンニ・ガッティさんと奥様のみほさん。

「オリーブの木で盆栽を作っているんだ」という農園主のジョヴァンニ・ガッティさん。
手づくりのパンや手料理でもてなしてくださった奥様のみほさん。

 敷地内にはローマ帝国時代の政治家であるカッスィオドーロの居城の跡があり、国の考古学研究対象になっているのだとか。100年以上の歴史を持つ14ヘクタールのオリーブ園には約1000本の野生のオリーブの木が生えている。

 ジョヴァンニさんは、自然のままに育った植物から得た製品は健康によいという信念を持った父親の農園を引き継いで、オーガニックなエキストラバージン・オリーブオイルをここで造っており、日本にも輸出している。

ギリシア風の前菜。ヤギのヨーグルトにキュウリ、塩・コショウ、そしてオリーブオイル。

 奥様の手料理でもてなしていただき、3種のオリーブオイルをテイスティング。先に訪れた官能評価検査室で教えてもらったように、ちょっとオイルの入ったカップを手で温め、まず香りをかぎ、次に口に含んでストリッパーレで息を吸い込む。オリーブオイルを舌、口全体、そして喉で味わう。3種のオリーブオイルは、ローズマリーの風味、バターのような濃厚さ、ビターでチコリの風味と、それぞれに個性的だった。

3種類のオリーブオイルをテイスティング。自分の感想とみほさんの解説が合っていて、ちょっとうれしい。

 オリーブオイルを巡る旅で、その味わい方を習うと、違いが分かるようになってきた。

 学んだのは、エキストラバージン・オリーブオイルは生の味わいが一番だということ、料理の最後に一振りするのが大事なテクニックだということ、テイスティングの具体的な方法、おいしいオイルはフルーティさ、苦味、辛味が立っているということ、そして、日に当てず、なるべく早めに使い切るという保存方法。

 オリーブオイルが日々の生活に欠かせないイタリアで、おいしくもためになる旅を満喫した。

【取材協力】
インターナショナル・オリーブ・カウンシル

URL http://believe-oliveoil.jp/

小野アムスデン道子 (おの アムスデン みちこ)
ロンリープラネット日本語版の立ち上げより編集に携わったことから、ローカルグルメや非日常の体験などこだわりのある旅の楽しみ方を発信するトラベル・ ジャーナリストへ。エアライン機内誌、新聞、ウェブサイトなどへの寄稿や旅番組のコメンテーター、講演などを通して、次なる旅先の提案をしている。
Twitter https://twitter.com/ono_travel

 

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2016.02.23(火)
文・撮影=小野アムスデン道子