世界を旅する女性トラベルライターが、これまでデジカメのメモリーの奥に眠らせたままだった小ネタをお蔵出しするのがこのコラム。敏腕の4人が、交替で登板します。
第125回は、小野アムスデン道子さんが本場イタリアで絶品オリーブオイルを味わい尽くします!
産地ごとに味が異なるオイルを使い分ける
サラダやパスタはもちろん、料理に使わない日はないというぐらいオリーブオイル好きの私。
エキストラバージン・オリーブオイルにバルサミコ酢をたらして、温めたフランスパンにちょいとつければ、それだけでワインがいけてしまう。醤油を足してマグロとアボカドを和えたり、タマネギのスライスをのせた豆腐にかけたり、和風にだって使えてしまう。かつ、抗酸化作用で知られるフェノール酸や、悪玉コレステロールを減らし善玉コレステロールを維持するオレイン酸が豊富だから身体にもいい。
そんなオリーブオイルをよりおいしく食べるには? オリーブオイル消費量ナンバー1の国イタリアで、その答えを探すような旅をした。
右:「オリーブオイルは地中海料理の母」という「マンマ・オリバ」のオーナー、アドリアーノ・ギガンテさん。
まずは、ミラノの2つのレストランでオリーブオイルへのこだわりを聞く。一軒目は、「ほぼすべての料理にエキストラバージン・オリーブオイルを使う」という「マンマ・オリバ」。
オーナーであるアドリアーノ・ギガンテさんによると「フライやオーブン料理には、シチリアやカンパニア産の味にパンチのあるものを使い、生魚のカルパッチョやサラダなどにはリグーリア産など軽いオイルを使う」。産地によって味に特徴があるので、お料理に合わせて使い分けるという。南部のものは重めの強い味、北部のものはさらりと軽い味だそう。
「だから、いろんなオリーブオイルを混ぜたものではなく、原産地が分かる単一品種のオリーブで造られたオリーブオイルを使うんだ。おいしいオリーブオイルは、イタリアでも1リットル12ユーロはする。その味を知ると、安くてまずいオリーブオイルは食べられないよ。あと、大事なのは保存方法。光を当てないように注意すること。オリーブオイルのおいしさが保てるのは、長くて1年。それもガラス瓶に入っているものはいいけど、缶入りは開けたらすぐ食べないと味が落ちる」と語る。
Mamma Oliva(マンマ・オリバ)
所在地 Via Luisa Battistotti Sassi, 11, 20133 Milano
電話番号 02-738-9510
URL http://www.mammaoliva.it/
もう一軒うかがったのはミシュラン1ツ星、地元で人気のリストランテ「ターノ・パッサミ・ローリオ」。シェフのターノ・パッサミさんは、毎年500種類のオリーブオイルを試し、50から60種の厳選したものを使うのだというからすごい。
非日常的でクリエイティブな料理を出すが、地中海料理をベースにしている点でオリーブオイルは大切なシンボルなのだ。1991年にリグーリア産の素晴らしいエキストラバージン・オリーブオイルに出会って、これを炒め物に使ってしまうとオイルの味も素材の味も生きないと、それ以来タマネギやニンニクを使う炒め物料理はやめたという。
ターノ氏も「原産地によって異なる味を分かっているかどうかがプロとアマの違いだ。私自身は、オリーブオイルを味によって5つのカテゴリーに分けていて、それぞれ産地が異なるんだ」と言い、「軽い(リグーリア)、やや軽い(サルディニア、カラブリア、ロマーニャ、マルケ)、真ん中(シチリア、アブルッツォ、カラブリア、カンパーニャ、サルデーニャ、ラツィオの一部)、やや強い(ガルダとアブルッツオとラツィオのいくつか)、強い(トスカーナ、プーリア、ウンブリア、モリーゼとバジリカータの一部)」とさらさらと産地名を挙げた。
オリーブオイルのテイスティングには、見た目に左右されないように、中身の色が分からない専用の青いテイスティンググラスを使う。まず、オイルの入ったグラスに片手でフタをして、もう一方の手で持って温め、香りをグラスの中に籠らせてから匂いを嗅ぐ。そして味見は、ストリッパーレといって、オイルを口に含んでから空気を鋭く吸い込んで、口の中にオイルを行き渡らせて味わう。
次々と出て来たクリエイティブなお料理には、ここでも最後に仕上げのエキストラバージン・オリーブオイルを一振り。その香りと味がお料理と素晴らしいハーモニーを奏でたのは言うまでもない。
Tano Passami L'olio(ターノ・パッサミ・ローリオ)
所在地 Via Eugenio Villoresi, 16, 20143 Milano
電話番号 02-839-4139
URL http://www.tanopassamilolio.it/
2016.02.23(火)
文・撮影=小野アムスデン道子