前作の1年後を描く、異色の続編『羊をかぞえる。』

――ちなみに、染谷さんが演じるうえで、映像と舞台の大きな違いはありますか?

 舞台はお客さんがステージ上の僕らを覗き見してる感じというか、それによって僕らの思い描いてることに共感していただく感じで、映像は映像をそのまま見て楽しんでいただく感じ。だから、全然違うと思います。それに舞台はテンポが命なので、早口になるんじゃなくて、相手のセリフを喰うぐらい言い出したくなる衝動みたいなものが大事だし、芝居もできるだけ大きくしなければいけない。それに対して、映像は間を大事にしたり、相手から受けたものをナマっぽく見せるテクニックが必要。あと、繊細な動きもカメラに撮られていることを注意しなきゃいけない。その切り替えは、注意深くやっています。

――さて、この春に公開された異色のロードムービー『カニを喰べる。』では赤澤燈さんとのW主演を務められ、息のあった掛け合いをされましたよね。

 ほとんど、燈と2人でストーリーを繋いでいく作品なので、このときも主演というものは意識しなかったですね。燈は僕にとって最多共演者のうえ、舞台をやっているあいだには、行きにハンバーグ、帰りにしゃぶしゃぶを食べに行くぐらいプライベートでも仲がいい関係。お互いに“こう言ったら、こう返してくる”とか分かるんですよね。だから、あまり事前に決めないで、スッと演技ができました。リハーサルをする時間はなかったんですが、顔を上げたり、同じ反応をするタイミングがバッチリ合うんですよ! それは自分でもスゴいと思いましたね。僕の方が3歳ほど年上なんですが、完全に同級生みたいな感覚です。

――このたび公開される続編『羊をかぞえる。』で、ふたたび田宮役を演じることになったわけですが、続編が決まったときの心境を教えてください。

 僕と燈のあいだでは「続編の話があったらいいね」みたいな話は冗談でしてたんですが、『カニ』の撮影が終わって半年後ぐらいにお話が来たときには驚きましたね。『カニ』のラストである程度話が完結していましたから、「あ、続くんだ」って! それに台本を読んだときにファンタジー要素が含まれていたので、こう攻めてきたか、と思いました。でも、田宮と燈が演じる青島の1年後をちょうど描いていて、撮影もちょうど1年後。話の展開は変わっても、2人の雰囲気は変わらずに演じることができたなと思いました。田宮が小説家になるという夢を持って、一歩前進していたのはちょっとだけ嬉しかったですね。

2015.10.09(金)
文=くれい響
撮影=細田忠