ミシシッピ川沿いのルイジアナ、ミシシッピ、アーカンソーの3州を訪ね、味わいのあるローカルタウンや、豪勢な昔のままのプランテーションハウスなどを巡る短期集中連載、今回の目的地はミシシッピ州です。独特なアメリカ南部の料理、ビッグ・ママの愛情スイーツなどを食べ歩き、アメリカ南部をたっぷり味わう旅をご紹介します。

過去と現在が交錯する南部の大邸宅で時間旅行

「キャッスル・レストラン・ダンレイス・ヒストリック・イン」で味わった前菜。フライド・グリーントマトにはベーコンジャムとスパイシーなウスターソースを添えて。

 1716年にフランス人によって開かれたミシシッピ川流域の最古の街、ナチェズに入る。かつては綿花やサトウキビの農園が広がり、南部でも裕福な農園主が大きなお屋敷に住んだ。ダウンタウンも昔ながらの街並が残っているが、ゆったりとしてきれいに整った感じがする。

 ここでは、1800年代からの商業ビルを改装したホテル「ナチェズ・マナー・ベッド・アンド・ブレックファスト」に泊まる。

朝ごはんは定番のグリッツ。グラインドコーン、ミルク、バターで作る南部のおかゆだ。

Natchez Manor Bed and Breakfast
(ナチェズ・マナー・ベッド・アンド・ブレックファスト)

所在地 600 Franklin St, Natchez, MS 39210
電話番号 +1-601-442-4441
URL http://www.natchezmanor.com/

 食事は、1790年代に建てられ、立派な門扉、城壁のような外観が“キャッスル”そのもののレストラン「キャッスル・レストラン・ダンレイス・ヒストリック・イン」へ。レストランのお料理は、前菜のフライド・グリーントマトから始まって、きちんとした南部の正餐という感じ。

「キャッスル・レストラン・ダンレイス・ヒストリック・イン」には映画スタッフのサインが残る。ミック・ジャガーも南部でアメリカのソウルに触れたのかも。

 意外なのが地下のパブで、こちらはレストランのかしこまった雰囲気とは異なって、午前4時まで開いている地元の憩いの場なのだが、なんとアメリカを代表するソウルシンガー、ファンクの帝王を描く映画の舞台に使われたという。

 ローリング・ストーンズのミック・ジャガーがリスペクトするジェームス・ブラウンを描いた映画『ジェームス・ブラウン 最高の魂を持つ男』がそれで、壁にはプロデューサーであるミック・ジャガーのサインも。重厚な建物とソウルシンガーの出て来るパブという組み合わせがさすが南部。

Castle Restaurant Dunleith Historic Inn
(キャッスル・レストラン・ダンレイス・ヒストリック・イン)

所在地 84 Homochitto St, Natchez, MS 39120
電話番号 +1-800-433-2445

部屋には、サザンベル(南部の貴婦人)がさりげなくたたずむ。

 ナチェズでは、プランテーションハウスなど、この地に残る美しい南部屋敷のうち10邸が常時公開されている。さらに春や秋の一定期間には、全部で24邸もの屋敷が1カ月限定で公開となり、それらを巡るガイドツアー「ナチェズ・ピルグリメージ」も開催される。

 ちょうど上手くこの公開期間に居合わせたので、ミシシッピ州の初代知事デイビッド・ホームズが住んだ1794年築の家をまず見学する。

サザンベルは、当時の日々の暮らしぶりや、女性のための学校が出来た意義などを話してくれる。かなりのなりきりぶり。

 面白いのは、案内の人がみな19世紀初頭の服装で登場して、当事者のような解説をすること。ホームズ役の人が「ようこそ我が家へ」といって見学者を招き入れ、当時の役人役が「彼は、アメリカ合衆国の下院議員を経て州知事となり、エリザベス・アカデミーという女性のための学校を任期中に建てた」とホームズの業績を語るという具合。

部屋は、小物にいたるまで当時の雰囲気を再現している。

 皆さんボランティアだそうだが、何年もやっているだけあって様になっている。内装も当時を再現していて、ちょっとしたタイムトリップ気分なツアーだ。

当時流行ったポルカを教えてもらい、見学者も一緒に中庭で踊る。

Natchez Pilgrimage Tours
(ナチェズ・ピルグリメージ・ツアーズ)

所在地 640 S Canal St, Natchez, MS 39120
電話番号 +1-601-446-6631
URL http://www.natchezpilgrimage.com/

2015.08.16(日)
文・撮影=小野アムスデン道子