目の前は海。美味しいものがないはずがない。ロケーション、食材、技術、サービス、すべてにおいて最上クラスのレストランが、ここには数えきれないほどある。

 その中から、3ツ星、1ツ星の代表と、星はなくてもサン・セバスチャンの食のクオリティを証明する店を自信をもって紹介する。

» 第2回 美しさと独創性が光る「ココチャ」
» 第3回 絶景レストラン「ミラドール・デ・ウリア」
» 第4回 ハリウッドセレブ御用達「ブランカ」

◆ Akelarre (アケラレ)

ハモン・イベリコのパスタ。下に薄いパスタが敷いてある。キノコとトリュフとパルメザンチーズがイベリコの味を一層引き立たせる。

 サン・セバスチャンにある3店の3ツ星レストランの中から今回選んだのは、眺めの良いレストラン「アケラレ」だ。

 全席から美しいビスケー湾が見えるが、ここはぜひとも窓際を予約したい。刻一刻と変わっていく海を眺めながらの食事は、幸せの頂点にいるかのように感じる。

 昼、夜ともにメニューは同じで3種類のコースがある。いずれもデザートだけでも3品出てくるので、お腹はペコペコにして行ってほしい。料理はどれも、見て楽しい、食べて美味しい、これぞ“新バスク料理”。40年にわたり一人のシェフが、先端的技法で革新的な料理を提供し続けていることに尊敬の念を覚える。シェフのペドロ・スビハナは言う。

「星や名声を守るためにやっているわけではなく、自分たちが良いと思う料理を作り続けているだけ。決してアイディアの泉のようなものはなく、毎日働き続けること、そこから生まれるものがあります。様々な科学者とのコラボレーションや、外からの情報も入れながら試行錯誤もします。でも、100の新しい試みから実際にメニューとなるのは2つぐらいです。私の哲学は、口が喜ぶ料理なんです」

 若手の育成も彼の大きな仕事だ。

「シェフになる、店を持つなどの肩書を得る目的だけでなく、料理に情熱をかける若者を育てることが大事です。バスク料理、サン・セバスチャン料理の発展のために、これからも料理界全体で頑張っていきたい」

Pedro Subijana(ペドロ・スビハナ)

父はパティスリーを経営。グルメの祖父にバスク地方の様々なところへ美味しい物を食べに連れて行ってもらう。大学は医学部に入る予定が、作った弁当を食べた友達に料理の道をすすめられ進路を変えた。「アケラレ」とはヤギの一種の名前。1978年に1ツ星、82年に2ツ星、2007年に3ツ星を獲得した。

撮影=橋本 篤