週末の旅は本屋さん

週末の旅は本屋さん

絵本作家を育てた町に 子どもの笑顔が咲く
広場のような本屋さん 川崎・北野書店

 今回で20回目となる連載エッセイ「週末の旅は本屋さん」で、一番の悩みであり、楽しみでもあるのは、本屋さん選びだ。本屋さんとしての魅力、書店員さんの魅力はもちろんだが、せっかく旅の目的地にするのだから、その土地土地の特徴のある本屋さんを選ぶようにしている。今回の訪問先は、地元ゆかりの作家さんを推し、その心を引き継ぐ町の本屋さん、川崎市幸区の北野書店である。

 多摩川右岸に位置するこのエリアは、戦後高度成長期を支えた工場が立ち並ぶ地域だったが、近年、通勤の利便性や工場移転によって、大規模なマンション開発が進む(以前紹介した中野島からは、だいぶ多摩川を下ったエリアに当たる)。北野書店は、JR南武線鹿島田駅からデッキで直結するスーパーの2階という便利な立地にある。副店長の小林麻美さんによると、駅前なので通勤通学のお客様も多いが、特に土日はお子さん連れのお父さんお母さんが多いお店とのこと。

多摩川両岸には、大規模なマンションが立ち並ぶ。
JR川崎駅から南武線立川行で3駅の鹿島田駅。駅前は大規模開発が進む。

 正面入り口脇を、絵本作家かこさとしさんの『だるまちゃんとてんぐちゃん』、『からすのパンやさん』のパネルが飾り、地元鹿島田との縁を伝えている。かこさとしさんは、福井県出身。多摩川を渡ったところにある研究所に勤務しながら、住まいのある地元川崎でセツルメント活動(いまでいうボランティア)の紙芝居や子ども遊びを通じて子どもたちと親しみ、後の絵本作家としての基礎を築いた。最近、ロングセラー絵本『からすのパンやさん』の続編や、子どもたちへのメッセージを伝える『未来のだるまちゃんへ』の刊行をきっかけにNHKの取材を受け、再び注目を集めるかこさとしさん。絵本や科学読み物、読み聞かせ本などを集めた店内の特設コーナーの売れ行きもよいという。

北野書店の正面入り口。だるまちゃんとからすたちが目をひく。
『未来のだるまちゃんへ』(文藝春秋)。かこさとしさんの故郷、福井県にちなんで、恐竜と越前和紙を陳列。

<次のページ> 子どもたちの声が絶えない売り場

2014.07.26(土)

文・撮影=小寺律

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