子どもたちの声が絶えない売り場

 取材日は夏休み前の土曜日の午後ということもあって、親子連れが多く、子どもたちの声が絶えない。絵本、児童書、文具、DVD、学習参考書や夏休みの課題図書、地元川崎のサッカー選手の本、と、子どもをターゲットにした本が充実しているのはもちろんだが、小林副店長によると、軽めのビジネス書や自己啓発書、エッセイなどもよく売れるという。子どもと一緒に来店してのついで買いというシーンが浮かぶ。

夏休み前なので、課題図書を大きく展開。

 北野書店では、図書館などでボランティアをしている方にお願いして、ほぼ毎月、読み聞かせ会を開催している。児童書コーナーの棚を動かしてスペースを作り、午前中は0歳児から楽しめる幼児向けの絵本、午後は3歳以上を対象にそれぞれ4~5冊の絵本を読んでいる。読み聞かせに使う本は、ボランティアと書店スタッフで相談して、季節や行事、オススメしたい本から選んでいるという。過去に読み聞かせた本はお店のサイトで紹介している(外部サイト)。

 今回の取材では、後ろの方で参加させていただいた。最初に手遊びや歌を歌って興味を引き、セリフに声色を使って場面を盛り上げ、子どもたちとの掛け合いもあって、子どもたちの目は本に釘付けだ。読み聞かせが終わると、子どもたちは売り場に散っていく。そのまま売り場で絵本を読んでいる親子、DVDのコーナーに行ってアニメ作品を選ぶ親子、何かをねだる声、何かを自慢する声がする。半世紀あまり前、かこさとしさんの紙芝居を見に広場に集まった子どもたちの声はどんなだっただろうか。

読み聞かせ会。『だるまちゃんとてんぐちゃん』に、「おれ持ってる」の声。
小林麻美さん。『どならない子育て』とともに。

【CREA WEB読者にオススメ】
 特定のジャンルの担当ではなく店舗全体を見ていると、なかなか自分の読書の余裕がないという小林さんだが、オススメの本をうかがうと、出版社ディスカヴァー・トゥエンティワンのフェアで、ご近所のお母さんたちから大きな反響があったという『どならない子育て』をあげてくださった。読み聞かせを通じて、親子のコミュニケーションの場になっている、北野書店らしい売れ筋なのではないかと思う。

北野書店
所在地 神奈川県川崎市幸区新塚越201番地ルリエ新川崎 マルエツ2階 ※鹿島田駅直結
営業時間 10:00~23:00(年中無休)
URL http://kitanobook.co.jp/
Facebook https://www.facebook.com/kitanobook/
Twitter https://twitter.com/kitanobook/

[取材後記] 「第一回神奈川本大賞」続報!

紀伊國屋書店横浜みなとみらい店の記事で紹介した「神奈川本大賞」を北野書店でも展開中で、ノミネート本10作品が店頭に並んでいた。大賞発表は2014年9月13日(土)、記念すべき第一回の神奈川本大賞はどの本に輝くか、そして、大賞というイベントを通じて、神奈川の本屋さんが本をどのように売っていくか、これからも注目したい。
神奈川本大賞Facebook https://www.facebook.com/kngwbookaward/

「神奈川本大賞」、ノミネート10作品を陳列。

小寺 律 (こでら りつ)
本と本屋さんと、お茶とお菓子(時々手作り)を愛する東京在住の会社員。天気がいい週末には自転車で本屋さん巡りをするのが趣味といえば趣味。読書は雑読派、好きな作家は、小川洋子さん、宮下奈都さん。

Column

週末の旅は本屋さん

新幹線や飛行機に乗らなくても、いとも簡単に未知のワンダーランドへと飛んでいける場所がある。それは書店。そこでは、素晴らしい知的興奮に満ちた体験があなたを待つ。さすらいの書店マニア・小寺律さんが、百花繚乱の個性を放つ注目の本屋さんへとナビゲートします!

 

2014.07.26(土)
文・撮影=小寺律