蒼い海と美しいビーチあり、南蛮文化に影響された独特のカルチャーあり、キリシタンの歴史が育んだロマンティックな風景あり。さらに、山海のグルメに恵まれ、ラグジュアリーなホテルから庶民派の温泉まで揃う天草は、旅好きには魅力満載の島。長崎の教会群とともにユネスコ世界遺産への登録を目指す天草の魅力を7回に渡ってお伝えします。

» 第1回 人なつっこいイルカに会える確率98% キュートなイルカ飛行機に乗って天草へ!
» 第2回 17世紀、天草の宣教師も食べていた? オリーブと天然塩作りの理想郷
» 第3回 陶磁器のふるさと”天草の個性的窯元と平成に甦った天草更紗を訪ねて
» 第5回 静かな漁港に望むゴシック様式の天主堂 キリシタンの歴史が息づく祈りの島
» 第6回 海からの風に南蛮文化の香り漂う 天草らしさを満喫できる個性派ホテル
» 第7回 日本ではじめて、いちじくが到来した島 南蛮の香り漂う天草のスイーツとグルメ

天草を旅したら、夕陽を見ずに帰るわけにはいかない

 天草を旅するのなら、絶対に見逃したくないもの。それは、美しい夕景。かつて天草を旅した北原白秋や与謝野鉄幹らが歌に詠んだ天草西海岸には、東シナ海に沈む夕陽が感動的な絶景スポットが多く点在する。「日本の夕陽百選」に選ばれた景勝地も含めて、とくに美しい場所は、「天草夕陽八景」と呼ばれている。

下田の夕陽(夕陽ヶ丘、鬼海ヶ浦)

(写真:入杉一彦)

 180度に広がるダイナミックな眺望。近くには下田温泉街があり、この夕陽を眺めるために訪れる旅行者も多いという。「日本の夕陽百選」に選定された。

十三仏公園の夕陽(天草町高浜)

(写真:山口亮)

 白鶴浜が真っ赤に染まってゆく様子がロマンティック。与謝野鉄幹もその様子を「天草の十三仏のやまに見る 海の入日とむらさきの波」と詠んだ。「日本の夕陽百選」。

大ケ瀬の夕陽(西平椿公園~農免道路)

(写真:江口伸生)

 山の上から岩場の背後に沈んでいく夕陽を眺める。海を見下ろすようにして建つ十字架がしだいに茜色に染まっていく光景は、キリシタンの島だった天草ならでは。

マリア像の夕陽(河浦町崎津) 

(写真:毛利俊文)

 明治政府によってキリスト教禁教令が解かれるまで、隠れキリシタンが信仰を守ってきた地。崎津天主堂近くの岬に立つマリア像は、漁の安全を願って建てられたもの。クリスチャンである崎津の漁師たちは、漁を終えてこの景色を見ると、ほっとするのだそう。

拝瀬・鳴瀬の夕陽(河浦町崎津)

(写真:杉本聖樹)

 海岸線が複雑に入り組む羊角湾の周辺や、崎津天主堂の辺りを散策しながら眺める夕陽。奇岩や漁船のシルエットが交わる拝瀬(おがみせ)の夕焼けは、どこか懐かしさを覚える。

魚貫・黒石の夕陽(魚貫町) 

(写真:山口亮)

 プライベートビーチのように静かな魚貫(おにき)海岸と黒石海岸を散策しながら楽しみたい。黒石海岸は、砂浜に降りて夕陽を眺めるのもきれい。とくに初夏から盛夏にかけての夕陽は格別。

遠見山公園の夕陽(牛深町) 

(写真:長浜ユカリ)

 牛深港や市街を一望する標高217メートルの山頂にある遠見山公園から眺める夕陽。夕陽が落ちた後は、美しくライトアップされたハイヤ大橋などの夜景も楽しめる。鎖国の頃、外国の不審船を見つけ狼煙(のろし)をあげる番所が置かれたほど見晴らしがいい。夕陽だけでなく、朝日が美しいことでも有名。

小森海岸の夕陽(牛深町) 

(写真:吉川茂文)

 烏帽子坑(明治時代に採掘されていた海底炭坑)跡と島を眺める。「日本の夕陽百選」。アーチ型の赤レンガの坑口は、100年以上の時を経ても、そのままの姿で現存している史跡。

2014.06.29(日)
文=芹澤和美