【WOMAN】
人気マンガ家の自叙伝は先生に対する後悔を描く

 宮崎に暮らすお気楽女子高生・明子が、美大受験に備え海の近くの絵画教室へ。そこで出会ったのが、竹刀片手に熱血スパルタ指導をおこなう日高先生だ。

 「いいから描けーーーッ」。がむしゃらに描いて描いて描いた日々こそが、青春だった。

 日高先生は、怖い。そして、優しい。明子が金沢の美大進学後、絵が描けなくなったと聞けば金沢まで駆けつけ、ニート生活中は絵画教室でアルバイトをさせる。師匠は弟子に、めいっぱいの愛を注ぐ。彼女が絵描きとして成功することを夢見て。でも、明子はマンガ家になることを選んだ。先生から離れることを望んだ。

 これはベストセラーマンガ家の東村アキコが、己の「まんが道」を振り返りサクセスストーリーを描くマンガ……じゃない。後悔を描くマンガだ。不肖の弟子である彼女は、師匠にもう恩返しできないと嘆き、悲しむ。なぜか? 先を読むのが怖い。だからこそ、ちゃんと読み継ぎたい。

『かくかくしかじか』 東村アキコ

「あの日から早20年 かくかくしかじかこういう理由で私は今 漫画を描いています」。『ママはテンパリスト』『海月姫』で知られる東村アキコの自伝マンガは、ギャグの切れ味はもちろん健在。現在の作者がもういない恩師に語りかけるモノローグの切なさも加わり、泣き笑い必至。
集英社(既刊3巻) 各743円
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Column

男と女のマンガ道

男と女の間には、深くて暗い川のごとき断絶が横たわる。その距離を埋めるための最高のツールが、実はマンガ。話題のマンガを読んで、互いを理解しよう!

2014.05.05(月)
文=吉田大助

CREA 2014年5月号
※この記事のデータは雑誌発売時のものであり、現在では異なる場合があります。

この記事の掲載号

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