長編デビュー作がいきなり、香港電影金像奨(香港アカデミー賞)で全9部門にノミネート。香港映画界に彗星のごとく現れた、ジュン・リー監督が実際に起きた事件を題材にした2作目『香港の流れ者たち』に対する思いのほか、社会派ドラマに人気スターを起用する理由についても語る。


●1本の短編から長編映画の監督に抜擢

――幼い頃の夢を教えてください。

 「将来、何になりたいか?」ということは、あまり考えていなかったですね。ただ、映画だけでなく、文学や演劇といったものに大変興味がありました。それで、学校演劇の脚本みたいなものも書いていました。

 その後、香港の大学では建築学とジャーナリズムを学び、イギリスのケンブリッジ大学に留学して、ジェンダー論を学びました。それにより、自然と社会問題に関心を持つようになりました。

――そんななか、映画監督を目指すきっかけとなった好きな監督や作品は?

 いちばん影響を受けているのは、スタンリー・クワン監督とスパイク・リー監督です。2人の作風はまったく違いますけど……、クワン監督の作品なら『ロアン・リンユィ 阮玲玉』『地下情 追いつめられた殺意』『藍宇~情熱の嵐~』の3本です。

 そして、映画を撮り始めてからは、ポール・トーマス・アンダーソン監督やホン・サンス監督、濱口竜介監督の作品が好きになりました。最近の作品では、ルーカス・ドン監督の『CLOSE/クロース』やショーン・ベイカー監督の『レッド・ロケット』が気に入っています。

――その後、17年に撮った『瀏陽河(日本未公開)』が、香港芸術発展局主催の短編映画賞「Fresh Wave」において、最優秀作品&監督賞をW受賞されます。

 当時の私は香港大学の社会学部で教授の助手をしており、学生から聞いた風俗嬢と障がい者の恋愛の話を、映画として撮ってみたいと思ったのがきっかけです。それが映画賞まで受賞して、映画監督になってしまうとは自分でも驚きです。

2023.12.22(金)
文=くれい響