この記事の連載

竹筒や麻袋はない

 シャンシャンは上野動物園にいた頃、ときどきハンモックでくつろいでいました。おやつが入った竹筒を振ったり、麻袋をいじったりしていたこともあります。雅安基地ではどうなのか、現地で飼育員さんに尋ねたところ、「ここには池や丘や大きな木があるので、今のところ、あなたが言うような遊具はありません」との答えでした。

 また、上野動物園ではシャンシャンが成長して身体能力が高まったので、木に巻いていた登り止めの鉄板を2020年の秋に外しました。するとシャンシャンはするすると木に登り、筆者が見上げてもよく見えないほど高い所に到達しました。一方、雅安基地では、10月12日(木)時点ではまだ木登りをしていないそうです。パンダは大人になるとあまり木登りをしなくなりますが、シャンシャンの父親のリーリー(力力)は、大人になってもよく登っていました。

 ただ、飼育員さんによると、シャンシャンは「もう臆病ではありません」。10月12日(木)の夕方、シャンシャンは屋外の丘を力強く登っていき、姿が見えなくなりました。まるで山の中に帰っていくようです。筆者の雅安での2日間の観覧はこれで終了。シャンシャンは可愛らしさに、たくましさも加わったような気がしました。

中川 美帆 (なかがわ みほ)

パンダジャーナリスト。早稲田大学教育学部卒。毎日新聞出版「週刊エコノミスト」などの記者を経て、ジャイアントパンダに関わる各分野の専門家に取材している。訪れたパンダの飼育地は、日本(4カ所)、中国本土(11カ所)、香港、マカオ、台湾、韓国、インドネシア、シンガポール、マレーシア、タイ、カナダ(2カ所)、アメリカ(4カ所)、メキシコ、ベルギー、スペイン、オーストリア、ドイツ、フランス、オランダ、イギリス、フィンランド、デンマーク、ロシア。近著に『パンダワールド We love PANDA』(大和書房)がある。
@nakagawamihoo

パンダワールド We love PANDA

定価 1,650円(税込)
大和書房
» この書籍を購入する(Amazonへリンク)

次の話を読む【パンダのシャンシャンに会う方法】 現地への行き方と料金の目安を解説 施設内での食事やパンダグッズは?

2023.11.11(土)
文・撮影=中川美帆