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屋内では観覧できない

 筆者が雅安基地に着いたのは、10月11日(水)午前11時半ごろ。シャンシャンの姿は見当たりません。パンダは朝と夕方に動きが活発になることが多く、お昼どきは寝ている可能性が高いのです。シャンシャンもお昼寝中だろうと想像しました。

 雅安基地では、シャンシャンが屋内へ行くと見えません。この点、屋内でも観覧できた上野動物園と異なります。また、雅安基地の屋外は草木が生い茂っているので、シャンシャンが奥へ行くと見えなくなります。

 そのためシャンシャンを観覧できるのは、ほぼ食事の時間だけでした。観客が見やすい場所に飼育員さんがエサを置いてくれるので、エサにつられたシャンシャンが姿を見せるのです。シャンシャンにとっては、いつでも姿を隠せるので、良い環境かもしれません。筆者は、ほかの観客から「次のエサの時間は午後2時ですよ」と教えていただき、いったんその場を離れました。

 いよいよ午後2時。観客は20人ほどに増えました。ところがシャンシャンは登場しません。どうやらシャンシャンは出てこないらしく、観客は一斉にいなくなりました。

 筆者は念のため遠くに行かず、隣のエリアにいるパンダたちを眺めていました。10分近く経ったとき、シャンシャンの観覧通路から人の声が聞こえました。行ってみると、目の前にシャンシャンがいて、竹を食べていました。

 上野動物園でシャンシャンを最後に見たのは2月19日(日)だったので、久々の再会です。少しふっくらしたように見えましたが、上野動物園がパンダセンターから得て10月12日(木)に公表した情報によると、体重は同園を発つ直前の99キロで変わっていないそうです。

 また、上野動物園で2月に見たときのシャンシャンは、屋内の寝台をくぐって体がこすれ、首の辺りの毛が短くなっていましたが、そこの毛もすっかり生えていました。

 午後3時半過ぎ、竹を食べ終えたシャンシャンが屋内に入ると、飼育員さんが現れて掃除し、たくさんのタケノコを置いていきました。ほどなく登場したシャンシャンは、タケノコをおいしそうに食べ始めました。このタケノコは雅安基地に生えているのか飼育員さんに尋ねたら、そうではなくて業者が運んでくると教えてくれました。

 タケノコはパンダの大好物。秋にこれほど大量のタケノコを用意できるのは、中国ならではと言えます。日本では秋冬にタケノコを収穫するのが難しいので、秋冬にパンダに与える場合は中国産のタケノコを八百屋で購入するなどしています。

 シャンシャンは午後4時過ぎに、太いタケノコを丸ごと2本くわえ、屋外の奥へと去って行きました。観客から見えない所で堪能するのでしょう。午後4時半になり、警備員さんが観客に退出するよう促しました。

 翌10月12日(木)は午前9時過ぎに雅安基地に入場しました。筆者が見逃していなければ、この日、シャンシャンが観客の前に登場したのは、午前1回、午後2回です。

 夕方には、パンダ団子のようなものを味わっていました。上野動物園でシャンシャンが食べていたパンダ団子は、トウモロコシ粉や米粉などを蒸したもの。上野動物園は2月24日(金)に「上野でいうパンダ団子は、味も見た目も違うのか、まだ食べません」と公式SNSにつづっていました。でもシャンシャンは、今ではすっかり慣れたようです。

2023.11.11(土)
文・撮影=中川美帆