この記事の連載

 2023年度のミシュランガイド香港・マカオにおいて、香港のレストランは78店舗が星を獲得。食は昔から香港における極上のエンターテインメントのひとつです。

 いつもより少しだけ背伸びをしてみたり、贅沢をしてみるのも旅の醍醐味。おいしさはもちろん、親しみやすくて喜びや驚きにも満ちた、思い出に残るレストランをご紹介します。ぜひドレスアップしてお出かけください!

日本人シェフの三つ星フレンチに舌鼓「Ta Vie 旅」
鬼才、サイラス・リーが生み出す新しい香港料理を楽しめる「Hong Kong Cuisine 1983」
警察署だった建物をリノベしたモダンな中国料理レストラン「The Chinese Library」
温室をテーマにした空間で独創的なカクテルを味わう「ARGO」


日本人シェフの三つ星フレンチに舌鼓「Ta Vie 旅」

 日本人だからこそ訪れたいのが、香港の中心街、中環(セントラル)にある「Ta Vie 旅」です。2023年度のミシュランガイド香港・マカオでは初めて三つ星を獲得! 今、ノリにノっている注目のレストランになります。

 オーナーシェフは長野県生まれの佐藤秀明さん。旅先のレストランでシェフが日本人というのは、なにより安心感がありますよね。

 佐藤さんはフランス料理店で10年以上働いたあと、東京にあるミシュラン三つ星の「日本料理 龍吟」で研鑽を積みます。そして、2012年に龍吟初の海外店舗「天空龍吟」の料理長として香港へ赴任。ミシュラン二つ星を獲得したのち、2015年に自身の店「Ta Vie 旅」をオープンしたのです。

アジアの食材をフレンチの技法で

 料理は日本のシーフードをはじめとするアジアの食材を、フレンチの技法を使ってモダンかつ美しく仕上げたもの。

 メニューは8皿のコースのみ。旬の食材に合わせて3ヶ月ごとに内容が変わります。

 参考までに料理をいくつかご紹介すると、例えば、生姜のドレッシングであえたナスの上に、燻製にしたアジやオストラキャビア、フェタチーズ、夏野菜をのせたひと皿。

 メイン食材のナスとさまざまな具材とのマリアージュは、ひと口ごとに新鮮な驚きと発見に出会えます。

ウニのパスタがシグネチャーメニュー

 店のスペシャリテであり、シグネチャーディッシュが、自家製のフィットチーネに浜名湖産の青海苔を和えて、その上に利尻島産のバフンウニをのせたひと皿。

 磯の香りとウニの風味が口の中に広がると、頭の中には海の光景が鮮明に浮かび上がってきます。イマジネーションをかきたてる鮮明な味わいが印象的です。

もっちもちの自家製パン

 自家製のパンも人気。糠床から作った天然酵母を使って焼き上げたパンは、外はパリッパリ、中はもっちもち! お好みで自家製の発酵バターもしくは、オリーブオイルをかけた自家製のリコッタチーズをつけてもよし。

 パンは3種類出てきますので、それぞれのこだわり、味わいの違いもお楽しみください。

デザートには旬のフルーツを使用

 デザートは旬のフルーツを使って作るのが「Ta Vie 旅」のこだわりです。桃のコンポートを主役に、マンゴスチンやココナッツとヨーグルトのシャーベット、桃の樹液である「桃膠(トウガウ)」を使った天然のゼリーを添え、全体を透明な殻で覆った、視覚的にも味わい的にもワクワクする〆のひと皿。

 素晴らしい高揚感に包まれながら、ディナーの幕が降りるって最高ですよね。

 ちなみにドリンクは希少なフランスワインのほか、日本や中国のワイン、日本酒、自家焙煎の紅茶などが揃います。料理とのペアリングもできますので、お任せしてしまうのもありです。ミシュラン三つ星レストランの実力を余すところなく堪能してみてください。

Ta Vie 旅

所在地 2/F, The Pottinger, 74 Queen’s Road Central, Central
電話番号 +852 2668 6488
営業時間 18:00~22:00
定休日 水曜
料金 季節のテイスティングメニュー2,980香港ドル、サービス料10%
https://www.tavie.com.hk/

2023.09.09(土)
文・撮影=石川博也