世界が認めたおもてなしの宿がある加賀、式年遷宮に沸く伊勢や出雲、海の恵みを満喫できる伊豆……今年訪ねたい街と名宿を一挙紹介。今回は、世界的な賞を贈られた、加賀の「べにや無何有(むかゆう)」。

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[加賀・山代温泉]
べにや無何有

横たわりながら眺める中庭の木々。特別室「若紫」の寝室から

到着から出発まで居心地のよさに包まれる

 清々しい宿である。宿名の「無何有(むかゆう)」は古代中国の思想家・荘子が好んだ言葉にちなんでいる。「何もない自然のまま」を標榜するだけあって、確かに、ここには華美なところはまるでない。センスがいいのである。

 能登の珪藻土の土間や柿渋染めの和紙や竹を巧みに使ったモダンな建築が、赤松や山桜の大木を擁する中庭をぐるりと囲む。春は山桜が咲き誇り、夏は目に眩しいほどの緑、秋は赫奕(かくやく)たる紅葉、冬は一面の雪景色、これほど四季の自然と一体化した宿もまたとないだろう。

 すでに「加賀に“べにや”在り」と言われて久しい名宿であるが、このたび、世界的なホテル&レストラングループであるルレ・エ・シャトーから最高の賞でもって顕彰された。そのホスピタリティがここを訪れた世界中のゲストに評価されたのである。

左:和とモダンが見事に融合した「べにや無何有」。すべての客室に露天風呂が設えられ、朝に夕にと時を忘れて湯浴みに浸れる
右:大浴場の露天風呂は「こもれびの湯」

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photographs:Makoto Ebisu
text:CREA Traveller