――その地獄の日々について、聞かせてください。

 当時のサモ・アリは、演出家の倉森勝利さん、座長の小松和重さん、さらに先輩役者の平田敦子さんなんかがいて。役者としての基本や芝居が上手な人の中でも更に面白い人たちを集めて作った劇団なので、何をやっても面白い。その輪の中に、芸人崩れの僕は入れなかったんです。

 台本は面白いのに、自分の芝居に乗せると面白くない。稽古では誰も笑ってないし、「つまらない」ってひたすらダメ出し。そんな時期がめちゃめちゃ続いていて、稽古中は朝起きたら手足が震える、街を歩いていてもすべてグレーに見える、みたいな状態でした。

――それは……ちょっと……言葉がありません。

 演出の倉森さんは僕を育てようとしてくれていました。だから、プライベートにまで口を出してきて「こういうバイトをしろ」とか「脚本も書け」とか。でも僕はそれが嫌で嫌で、ついには「劇団を辞めます」って倉森さんと座長の小松さんに電話をしたんです。倉森さんは留守電でしたが、小松さんとは電話が繋がって、直接会って話をしました。

 「何がつらいの?」って聞かれて、「実は……」ってそれまで4年以上ひとりで溜め込んでいたことを思いっきり話したら、小松さんは「見せるつもりなかったけど、これを見せるね」って倉森さんからのメールを僕に見せてくれたんです。

 『俺は佐藤がようやく育ってきてサモ・アリにとって必要な役者になったと思うから、今辞めてもらっては困る。でも小松くんが佐藤を必要としないんだったら辞めさせても構わない。今日は俺が行ったら佐藤はちゃんと話せないだろうから、小松くんが話を聞いてあげてね』って。

――大丈夫ですか?

 すみません、この話をすると目頭が熱くなっちゃうんです。

 倉森さんのメールを見せてくれた後、小松さんが「俺はお前を止める」って言ってくれて。この一言があったから、サモ・アリで役者を続けることに決めました。

 それからは急にみんなが優しくなって、もう褒める、褒める(笑)。もともと僕は一人っ子で、親に溺愛されて育っていますから、褒められて伸びるタイプなんですよ!

――まさに人生を変える一言でしたね。

 本当に人生であの一言が一番嬉しかった。僕は必要とされていたんだと思って、そこから一気に芝居が楽しくなりましたね。そうしたら客演の仕事もだんだん増えてきて、そこから「みいつけた!」の仕事にも繋がりました。

2018.12.12(水)
構成=FUNFUN
文=濱野奈美子
撮影=佐藤 亘

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