フランス美術史に残る
一大スキャンダルとは?

 父を亡くし莫大な遺産を継いだギュスターヴは、ドガやモネ、ピサロ、ルノワール、セザンヌやシスレーら同時代の印象派画家の作品を購入し続けたコレクターでもあった。

 このコレクションを彼は、ルーヴルやリュクサンブール美術館に寄贈するとフランス政府へ遺言したが、当時のアカデミーが展示スペースがないことを理由に6割しか引き取らず、4割は海外に流出した。

 これは今もフランス美術史の大きなスキャンダル。何せ引き取られた作品は、後にオルセー美術館の屋台骨となった作品ばかり。多趣味で多才、目利きだったギュスターヴの面目躍如である。

 通常は王宮やシャトーの家具を管理するモビリエ・ナショナル(歴史的価値ある家具の国立保管庫)が、惜しみなくプロプリエテ・カイユボットに家具を貸し出しているのは、そんな背景を思うとより一層、味わい深い。

 再現展示だけでなく、フェルム・オルネと呼ばれる別棟では年2回の企画展、オランジュリーでは1、2カ月ごとに小規模展を開催。

 だが美術品を見せる美術館は多々あれど、画家の才能を育んだ環境や、描かれた世界そのものに没入できる美術館はそうはない。

 冬期は閉館しているが、旬は初夏。ボートから眺めるイェール川の新緑は、作品と同じぐらい圧巻とだけ言っておこう。

La Propriété Caillebotte 
(プロプリエテ・カイユボット)

所在地 8 rue de Concy 91330 Yerres
電話番号 01-80-37-20-61
http://proprietecaillebotte.com/

【カイユボットの家】
開館時間 14:00~18:30
定休日 月曜、祝日、12月3日~3月22日
料金 8ユーロ(常設&企画展は10ユーロ)

【敷地内公園】
開場時間 9:00~18:30(4・5月 9:00~20:30、6・7月 9:00~21:00、8・9月 9:00~20:00)
定休日 無休

Feature

フランスの美術館は
進化が止まらない!

Text=Kazuhiro Nanyo
Photo=Toshiaki Miyamoto