街並みも、行き交う人も、街角のストリート作品に至るまで、パリはアートに溢れている。アーティストの生きた時間を彷彿させる個性的な美術館が毎年誕生する国、フランス。その空間に身を置くことで創作のパワーを感じさせる美術館を目当てに、旅に出よう。


目利きを育んだ避暑地の邸宅

●La Propriété Caillebotte 
(プロプリエテ・カイユボット)

約11ヘクタールもの敷地内に19世紀の邸宅(左奥)と英国式庭園があり、イェール川も流れる。

 印象派の足跡を辿るのに、これまで定番はパリから西方、オワーズやノルマンディだった。

 だが近年、“印象派の道”に加えられた新名所として、パリの南南東、イェールのプロプリエテ・カイユボットを挙げない訳にはいかない。

庭園内にはギリシャ・ローマ風、スイス風、東洋風などエキゾティック趣味の小建築が多数ある。

 パリから近郊線RERと徒歩で30分ほど、印象派の画家ギュスターヴ・カイユボットの一家が夏の避暑地に使った邸宅が、昨年改修を済ませ、市営の美術館として門戸を開いているのだ。

ギュスターヴ・カイユボットは1860年代から邸宅のあちこちを描き、80点強の作品を残した。

 G・カイユボットはここ二十数年、世界中で大規模な回顧展が開かれ、再評価が進んだ。

 この元邸宅は2014年に42点の作品を擁する企画展を催した後、当時の雰囲気を再現するため改修を受けた。

 彼の父はナポレオン3世の軍隊に軍服やテントに使う生地を納めていた裕福な商人で、当時もかなりスノッブであったろう、見事な英国式庭園も公園として一般開放されている。

菜園は市民有志の手で整えられ、カイユボットの絵画に頻出するクロシェットが並ぶ。

 19世紀中葉に一家がオーダーしたサロンの壁紙や調度品、食堂のセーヴル磁器などの注文書はメーカーのアーカイブに遺っており、食堂と二つのサロン、両親の主寝室が忠実に再現された。

 有名な未完の作品、ビリヤード台のあるサロンなどは、まさしく絵そのものの眺めだ。

当時の婦人用サロンは針仕事しながらくつろげる造りだったとか。

 上階の子ども部屋はアルフレッド、ギュスターヴ、マルシャルら兄弟それぞれの人生をなぞる展示となっている。

 ギュスターヴは絵だけでなく、弟とともに切手収集というホビーを創始し、ヨットの設計にも没頭していたとか。

Text=Kazuhiro Nanyo
Photo=Toshiaki Miyamoto

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