アトリエとサロンの跡地にて待望のオープン

“モードの帝王”、イヴ・サンローランの作品群。

 パリの中でもトップメゾンの旗艦店が並ぶアベニュー・モンテーニュの近く、16区のアベニュー・マルソー。2017年10月、その5番地に、新しい美術館「イヴ・サンローラン美術館」が誕生した。

 4階建てのクラシックで瀟洒な建物は、もとはベルジェ・サンローラン財団が置かれていた場所。イヴ・サンローラン氏と、その公私ともにパートナーであり、この美術館のオープンを待たずにこの世を去ったピエール・ベルジェ氏によるオートクチュールのアトリエとサロンがあった場所だった。オープン当日から大人気を博し、常に入館のための長蛇の列が続いている。

もともとアトリエとサロンがあった場所。

 美術館の中では、1962年から2002年までの40年もの間、世界のモードをリードしたサンローランの作品を見学することができる。約5000点ものオートクチュールのほか、プレタポルテ、アクセサリー、小物、デッサンなどを保管。さまざまな企画展により展示品が替えられる予定だ。

かつてオートクチュールをオーダーするために使われていたサロン。

 建物の1階、シャンデリアが美しく輝くサロンはかつてオートクチュールをオーダーするための場所だった。当時を知る顧客によると「ゲストが自分で着たいものを頼んでも、サンローラン氏は『これはあなたには似合わない』とはっきり告げ、本人が考えてもいなかったアドヴァイスをしてくれた。そしてその人に非常によく似合う、最高の服が仕上がったものだ」という逸話があるという。

 2階と3階には、20世紀のオートクチュールの真髄を堪能できる作品のほか、今にもサンローラン氏が仕事着をまといドアから出てきそうなアトリエが、忠実に再現されている。彼のデッサンやメモ、生地見本、資料などが所狭しと大きなテーブルに並べられ、トルソーに着せられているのは代表作のサファリジャケットだ。

左:トルソーには代表作のサファリジャケットが。
右:デッサンやメモなども忠実に再現されたアトリエ。

 サンローラン氏の偉業のひとつは、男性用の服を女性が着られるようにしたことと言われている。女性用のタキシードも然り。マニッシュな仕立ての中に女性らしいエッセンスを絶妙にアレンジし、独自のパリモードを確立した。「イヴ・サンローラン美術館」ではその作品群を心から楽しむことができる。

 また、ベルジェ氏との邸宅があるモロッコのマラケシュにも同時期に「イヴ・サンローラン美術館」がオープン。館内のブティックでは、マラケシュでも販売されているミュージアムグッズが人気だ。

ミュージアムグッズが豊富に揃う館内のブティック。

Musée Yves Saint Laurent Paris
(イヴ・サンローラン美術館)

所在地 5 avenue Marceau, 75116 Paris
電話番号 01-44-31-64-00
開館日 火~日曜 11:00~18:00、金曜 ~21:00
休館日 月曜、1月1日、5月1日、12月25日
入館料 10ユーロ
https://museeyslparis.com/

2018.01.10(水)
撮影=齋藤順子