JR和歌山駅からバスに乗ること約15分。堀止バス停で下車して、大きな堀止交差点の南西角のビルにある、小さなパンの店「3ft(サンエフティ)」を訪ねました。

 ビルの外壁に「3ft」の文字。季節にちなんだオブジェや枝物が飾られたガラス越しにちらっと店内の様子が見えます。らせん階段を数段降りると、吹き抜けの狭い空間。平台にパンがアート作品のようにさりげなく並んでいます。パンの店らしくない、何とも不思議な雰囲気。置かれているパンをじっくり鑑賞してみましょうか。

 店主・なかむらたかしさんは、1989年、和歌山県出身。高校生の時『焼きたて!!ジャぱん』という漫画を読んでパンに興味を持ち、自分で作ってみたのだそう。

「友人が食べて喜んでくれたのがうれしくて、パンを勉強したいと思った」

 大阪の製パン学校を卒業して、パン屋で修業すること3年。実家へ戻り、パンを焼いてイベントやギャラリーでの販売を始めると、じわじわ人気に。

 そして、2016年4月、和歌山市内に「名前のないパン屋」をオープン。看板もなく、現代アートのオブジェのようなパンの陳列もパン好きの間で話題になりました。

 工房を備えた現在の店舗に移転オープンしたのは、2017年11月3日。「名前のない店として3階(3f)からスタートし、次の店になったので、次に進むという意味を込めて、startの頭文字Sのアルファベットの次であるTをプラスしました」と不思議な店名の由来を話してくれました。

 「日本の豊かな風土が育んだ小麦と、数種類の酵母を組み合わせてパンを作っています」

 ベースとなるパン生地の材料は、国産小麦、自家製酵母、塩、水。小麦粉は北海道や埼玉県、滋賀県産をブレンドして使用。酵母は酸味が出ない、レーズン、ヨーグルト、ルヴァンの他、すぐ近くの味噌屋で扱う生麹から起こしたものを使っているのだそう。

 「色々な酵母を組み合わせると、日本にしかないパン文化が生まれる」とにっこり。

 たっぷり加水した小麦粉に最小限の酵母を加えて練り上げ、常温で長時間発酵。1晩置いて「翌朝4時に店に来たらオーブンを温め、2キロや1キロの大きな塊を高温で焼き上げています」。

 5種類の生地から季節に合わせて作られるのは20種類余り。大きな塊は半分や4分の1にカットして販売されています。パンは、3日前までにインターネットか電話で予約。欲しいパンを購入するには予約をした方が確実です。

2018.10.14(日)
文・撮影=そおだよおこ

SHARE

この記事が気に入ったら「いいね」をしよう!