■星野リゾート 界 アルプス(前篇)

 日本の地方の魅力を掘り起こし、プロデュースすることで日本の観光に一石を投じてきた星野リゾート。その各施設を訪れ、地方らしい遊び方、旅の仕方を再発見していこうというシリーズが「日本を遊ぼう!」です。

 今回ご紹介するのは、「星野リゾート 界 アルプス」。北アルプスの玄関口にあって、白馬スキー場や黒部ダムなどにも近い温泉宿で、信州の田舎を贅沢に楽しみます。

雪国ならではの雁木造りが美しい

雪国の伝統的な雁木造りのモダンな建物が美しい。

 北アルプスの山々に囲まれた大町温泉郷。1年9カ月近くの新装建て替えのための休館を経て、この地で2017年12月21日に再開業した「星野リゾート 界 アルプス」。テーマは“信州の贅沢な田舎を体感する温泉宿”である。

夕食後は、炭火で温めたもてなしの燗酒を囲炉裏端で酌み交わして。

 「界 アルプス」では、雪国の伝統的な建築である雪除けのアーケード「雁木(がんぎ)造り」の客室棟や温泉棟が左右に並び、真ん中の路の奥には泉嶽寺(せんがくじ)の祠、その向こうに北アルプスの眺めが美しい。到着すると、まずは「おやきでもどうぞ」と誘われる。囲炉裏端に座って、あつあつに焼き上げられたおやきをいただこう。

手慣れた感じでおやきを焼くスタッフ。火の絶えない囲炉裏、夜間は灰をかけて守をする。

 吹き抜けの囲炉裏の間で、熱々のおやきを出してくれたスタッフの矢口達夫さんは「昔は、囲炉裏が生活の中心で、新聞を読む家長を囲んで、ネガティブな話はなし、腰を下ろしたら動かなくていいよとばかり、みんなで寛ぐ場でした」と懐かしそうに語る。

 ふうふう言いながら、おやきや昔ながらの甘酸っぱい焼きりんごを頬張るのは、現代では贅沢な田舎の体験だと言える。

施設の背後を飾る北アルプスの山並が美しい。

 大町温泉は、7年の歳月をかけた世紀の難工事の末に黒部ダムが完成した後、立山黒部アルペンルートの貫通とともに、葛温泉からの引湯で作られたもの。そうして黒部の玄関口となり、スキーや登山などで北アルプスを訪れる人に憩いをもたらしている。

 「界 アルプス」からアルペンルートまでは車で約20分。春の訪れと共に、2018年は4月15日に全線が開通している。

2018.04.21(土)
文=小野アムスデン道子
撮影=鈴木七絵