伊勢丹に行ったのに買いたい服がない!

「夏のイベント&お出かけはすべて浴衣で乗り切りました(笑)」。ストライプの浴衣やストリートアートの帯など、バリエーションも楽しんで。

 手持ちの服に愛着が生まれると、クローゼットの中身はさらに変化していった。

「チャレンジが進むに従って、『私のクローゼットに、まあまあの服を入れるなんて許さん!』状態になっていきました(笑)。

 あと、チャレンジの最初の頃は、逃げ道ルールでOKにしていた、取材やイベント時に着る衣装を買えるのが嬉しくて、喜んで買いに行っていたんです。ところが、4カ月目か5カ月目あたりだったかな。以前は週1で足を運んでいた伊勢丹 新宿店に衣装を探しに行ったら、買いたいものが見つからなかったの。この衝撃は大きかったです。

 買いたいものがないなら無理して買わず、7枚ほど持っていた手持ちの浴衣を着まわして夏のイベントを乗り切るとか、いままでにはなかった工夫をする自分の変わり様にも驚きましたよね」

ファスティングにも似た
自分の中の変化

 自分でも気づかない間に、じわじわと変化が押し寄せてくる。その感覚を松尾さんは、ファスティング(断食)でも味わったことがあるという。

「私は定期的にファスティングに通っていますけど、食べ物を断って体の中をリセットすると、野菜本来の甘みを感じたり、ジャンクな食生活から自然と離れたりすることができるんです。大好きだったうまい棒さえも、いらなくなる(笑)。

 洋服もそれと一緒だなと思いました。新しい服を買わない“ファッション断食”は、いまの自分に本当に必要な服を教えてくれましたし、自分らしく装うことの心地よさ、ファッションの楽しみを知ったから、買わないことが苦痛ではなくなりました。

 大きな痛みを伴うことなく根本から自分が変わっていける。チャレンジが終了して1年以上たったいまもクローゼットがすっきり片付いていることが、このチャレンジが有意義であることを証明していますよね」

【100日間・1年間洋服を買わないチャレンジ成功の秘訣】
(1) 洋服屋には近寄らない

 見ればやっぱり欲しくなる。無駄なストレスを減らすためにも、なるべく近寄らないのが賢明。
(2) 家族や友人・知人には大いに話す
 人に話すことで、自分の耳でもチャレンジ中であることを再確認。モチベーションの維持に役立つ。
(3) 目に入るところに書く
 カレンダー、手帳、はたまた紙に書いて冷蔵庫やトイレに貼っても。自分への意識づけが重要。
(4) ご褒美を決めておく
 自分のがんばりを認めて褒めてあげるためのご褒美をぜひ。ちなみに松尾さんの場合は、100日達成時のお鮨、半年と1年達成時の1泊旅行。

『クローゼットがはちきれそうなのに着る服がない! そんな私が、1年間洋服を買わないチャレンジをしてわかったこと』

著・松尾たいこ
本体1,300円+税 扶桑社刊
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松尾たいこ(まつお・たいこ)
イラストレーター/アーティスト。広島県呉市生まれ。約10年の自動車メーカー勤務の後、35歳でイラストレーターに。企業の広告や書籍の装丁などで幅広く活躍中。近著に『東京お遍路ゆる散歩』(キノブックス)、『35歳からわたしが輝くために捨てるもの』(かんき出版)など。2014年より福井で陶器作品の制作を開始。現在、東京・軽井沢・福井で三拠点生活を送る。2018年1月19日(金)~2月12日(月・祝)、六本木ヒルズ A/Dギャラリーで個展を開催。
公式ブログ http://ameblo.jp/taiko-closet/
公式サイト http://taikomatsuo.jimdo.com/

2018.01.20(土)
文=今富夕起
撮影=平松市聖